スタイルを切り始める場所には、意味がある!
『JENO』堀江昌樹さんのカットの考え方

皆さんは、ヘアスタイルをつくるとき、どこから切り始めますか? 前下がりなら後ろから、マッシュ系など前上がりは前から切るのは一般的ですが、コンテストなどでのカット風景を見ていると、どんなスタイルも後ろから切る人が圧倒的に多いように感じます。

慣れた切り方でスピードアップすることもいいのですが、つくるスタイルや目的に合わせて、切り始める場所や切り方を変えていくのは効率的ですし、結果的には技術やデザインの幅を広げていくことにもつながります。ここでは、『JENO』堀江昌樹さんの基本的な考え方を、『SHINBIYO』の企画でつくっていただいたスタイルを例に挙げながら、紹介していきます。

イア・トゥ・イアから切る場合

・スタイルの奥行きをコントロールしやすい

・前に切り進む場合は後ろに引きながら、後ろに切り進む場合は前に引きながら切れるので、イア・トゥ・イアを一番タイトに、前後に長さやボリュームをつくることができる。

SHINBIYO2017年6月号「5approach」より

こちらが、イア・トゥ・イアから切ったショートスタイル。耳上はタイトに締まり、バックにはボリューム感、顔周りに長さが残っている。

後ろから切る場合

・オンベースに引き出しやすいので、頭の丸みにフィットしやすい(骨格が出やすい)。

・後ろに引きながら切りやすいので、前下がりをつくるのに向く。

・前に長さを残しやすい。

前から切る場合

・前に引きやすいので、マッシュ系など前下がりをつくるのに向く。

・顔周りのデザインを決めやすい。

・後ろに長さを残しやすい。

SHINBIYO2018年12月号表紙

マッシュウルフスタイル。オーバー~ミドルのマッシュは、前から切っている。顔周りを前方に引いてフロントにマッシュベースをつくり、サイド~バックにかけては、ラウンド状にグラを入れてつなげている。ちなみに、アンダーは、後ろからカットしたレイヤー。

上から切る場合

・トップの長さ、ウエイト感を最初に決めることができる。

(ロングから大幅なレングスチェンジをするときなどは、特に有効!)

・ウルフ系やメンズ系など、上の重さをとりやすい。

・ハチ張りなど、骨格を補正しやすい。

下から切る場合

・最初にレングスを決めることができる

・下から重さを積み上げていくので、ボブやAラインなど重さのあるスタイルに向く。

SHINBIYO2018年4月号パーマ特集「重軽2大トレンドのつくり方」より

下から切る代表スタイルのワンレングスベース。下から重さを積み重ねていくので、安定感のあるフォルムをつくることができる。

以上のような、切り始める位置に加えて、スライスの角度などによっても仕上がりのスタイルは様々に広がりますし、セクションごとに切り方(切り始め)を変えることも可能です。

今はこのように切り分けている堀江さんも、実は、「デビュー当時は、得意な同じ切り方を繰り返していた」とか。でも、サロンワークで、同じような切り方だけではつくれないスタイルにぶつかる中で、試行錯誤しながら、そのスタイルに合った切り方を自分なりに整理してきたそうです。お心当たりがある方は、この機会に、いろいろな切り方にチャレンジしてみてはどうでしょうか?

堀江昌樹 ほりえ・まさき

1981年生まれ、滋賀県出身。ル・トーア東亜美容専門学校卒業。2002年、『apish』入社。統括クリエイティブディレクターを経て、2017年社内独立をし、『JENO』代表に就任。