クリエイションを支える「創作ノート」の活用
Praha 大川英伸さんの作品づくりの裏側

大胆さと繊細さを併せ持ちつつ、常に新しい打ち出しを感じさせるPraha大川さんの作品。弊誌でも度々登場いただく機会があり、そのたびに気になっていたのが、打ち合わせの際に登場する「創作ノート」です。今回はその一部を、少しだけご紹介します!

作品づくりは、シルエット(フォルム)を

イメージするところからはじまる

まず驚くのが、撮影までに描いているヘアスタイルデッサンの数。撮影の体数にもよりますが、何ページにもわたり、いくつものデッサンがページ内に描かれており、思考錯誤を繰り返しているのがよくわかります。大川さん曰く、「作品づくりは、まずシルエットをイメージするところから始まる」そうで、頭に思い描いた理想の形、つくりたい形をとにかくノートに描くとのことです。

 

大川さんはまず、シルエット(フォルム)を発想するそうですが、そこが決まると女性像が見えてくると言います。この髪型をする人は一体どんな人なのか、それをあれこれ妄想していくうちに、女性像、衣装、メイク、その人の趣味嗜好、生活に至るまでがだんだんと浮かんでくるそう。そこで浮かんだイメージを受けて、さらにディテールのアイデアを思いつくこともあるので、それらもノートに書き留めていきます。

関連するイメージワードを

思いつくままに書いていく

もちろん、依頼される撮影の場合には、テーマや条件なども大きく関係してくるので、そういったものがある場合はその点も踏まえつつ、ヘアデザインと共に浮かんでくるキーワードも一緒に書き連ねていきます。テーマを深く突き詰めていく中で、自分なりの言葉に置き換えたり、そこから発想される言葉に変換したり、さまざまな角度から、作品のイメージを浮かび上がらせていきます。中には文字だけを書いたページもあるほど!

そこまでを行なってから、イメージに合うモデルさんを探す、という順番になるそうです。もちろんモデルさんにもそれぞれの個性があるので、そこからまた具体的な条件と共にすり合わせをしていく作業があるのですが、まずは「ヘアデザイン(フォルム)ありき」というスタンスが、この「創作ノート」から垣間見られたのでした。

この「創作ノート」は常に携帯し、仕事後に立ち寄るカフェやお店、なんと公園などでも描くことがあるそう。描くときに使っているのは万年筆(写真・赤色の万年筆)。書き心地や、紙のインクの吸い込み具合などが気に入っているそうです。

“絵に描くことができれば、

形をつくることができる”

「絵に描くことができれば、形にできる! そこが目標です!」と語る大川さん。作品をつくるときに、深く考え、突き詰めていく。そして頭の中にあるものを目の前に表出させる。モデルさんで実際につくるまえに、深く考え抜くことの繰り返しこそが、大川さんの作品の深みにつながっていることが実感できました。作品づくりに取り組んでいる方も多いと思いますが、ノートを活用し、絵を描くことを通して、深く深く作品に没入していっていただけたらと思います。

大川さんは9月号(8月1日発売)の『ORIGINAL DESIGN』でもご登場いただく予定です。その際の仕上がりと是非、比べてみてください!

大川英伸さん(おおかわ・ひでのぶ) 1974年生まれ、群馬県出身。日本美容専門学校夜間部卒業後、都内3店舗、群馬県1店舗、都内1店舗を経て、2006年に東京・代官山に『Praha』をオープン。