大川英伸さん(Praha)に聞きたい10のこと (前編)
今、最もホットなヘアデザイナーが語る「クリエイション」について

注目のヘアデザイナーに、クリエイションについてお聞きする企画。今回は、月刊『SHINBIYO』9月号の連載企画「ORIGINAL DESIGN」にてクールなデザインを見せてくださった、『Praha』の大川英伸さんが登場です! 誌面よりさらに詳しく、ヘアデザインにかける想いについて語っていただきました。今回は前半のQ1~Q5をご紹介します。

Q1 デザインは煮詰めていくタイプですか? ひらめき派ですか?

煮詰めていく部分ももちろんありますが、メインの部分については「ひらめき派」だと思います。企画書を目にしたり、テーマを聞いたときなど、最初に内容に触れたときにポンと思いつくものがあるんです。それは具体的なデザインでなく、映像だったり、言葉だったり、時には歌詞だったりすることもあるんですが、自分の中に「降りてくる感覚」があって。それはそれとしていったん置いておき、いろいろなことを踏まえて新たに考えていくのですが、最終的に突き詰めていくと、やっぱりその時に降りてきたものが、自分の本当にやりたいことであったり、表現として面白いものであることが多いように思います。最初に「降りてくるもの」は、完全に自分の生きてきた中のものと結びついていると感じるので、ヘアデザインって、本当に生き方が重要なんだなと思いますね。

9月号『ORIGINAL DESIGN』の作品テーマ「アシンメトリー」も、最初に企画を聞いたときに降りてきたイメージだったそう。その後、「創作ノート」(SHINBIYO Flash 6/28掲載記事)を活用しつつ、さまざまな角度から検討したが、一番やりたいことにフィットした「アシンメトリー」というテーマに最終的に決定。「ここ数年やってきた撮影の中でも、“自分の中のアシンメトリー”はこれなのだ、と言い切れた作品。自分の中での答えがみつかった感じというか、行き着いたと感じる作品でもありました」と大川さん。

Q2大川さんのデザインには、

これまでのご自身の生き方が大きく影響しているということですか?

そうですね。僕は中学とか高校であまり勉強はしてこなかったんですが、その時の経験や感じていたことがデザインをするときに、すごく活きているなあと思うんです。音楽の話になっちゃうんですけど、僕はその頃、ロックやパンクにすごい衝撃を受けていて。彼らの世の中の流行とは違うところにいる姿やアイデンティティ、「マイノリティ」という生き方などに強く影響を受けたように思います。インディーズっていうところでもがいている姿が、土臭くて好きなのかな。自分が好きだったバンドがもし「メジャー」にいってしまったら、好きじゃなくなっていたかもしれないですね。ちょっとひねくれているというか、天邪鬼なのかもしれませんけど。

Q3それは、作品をつくるときにどう結びついているのですか?

「好かれるもの」と「嫌われるもの」があるとして、僕がどちらをつくるかというと、「嫌われるもの」のほうだということですかね。「好かれるもの」のほうは賛同してくれる人が多いのに対し、「嫌われるもの」のほうは、本当に頑張らないとコケてしまうし、理解してもらえないこともある。だから正直、とても大変な選択ではあるのですが、それをどうにかしてカッコよくしたり、汚さの中に美しさを入れていきたいと思う。そこに僕のデザインの根幹があるように思います。

Q4モデル選びのポイントはありますか?

作品づくりにおいて一番に考えるのは、その撮影で表現したいところ。それを実現できるかどうかは、モデルさんが「切らせてくれる」かどうかにかかってくるので、必ず切れる、つくりたいものに近づけられる方を探すようにしています。自分のカットよりモデルさんの顔を優先するということはしたくないなと思っていますね。その上で、ヘアデザインづくりを一緒に楽しんでくれる方がいいなと思います。自分の世界観だけを押し付けるのではなく、お互いの了解を経てスタートしたいので、毎回説明にはたくさん時間をかけるようにしています。

モデルさんの好みとしては、顔とか内面とか、中性的な子がいいですね。女性のショートデザインを考えるときに、男性の側から考えたりすることがあるんです。男性の場合も女性の側から考えたりすることもあるので、割と男女のラインがぼんやりしているほうがいいかもしれないですね。

Q5女性のヘアを男性側から考えるとは、具体的にどういうことですか?

実際につくるのは女性のモデルさんなのですが、男性の髪形をベースにして考えてみるということです。普通、女性の髪型を考えるときは、女性の世界観の中でだと思うんですけど、人と同じ考え方をしていても似たり寄ったりになってしまいますよね。人と違う目線や思考を持たないと「ちょっと違うもの」というのは、生まれないんじゃないかと思うんです。だから男性の側から考えてみるという、自由な発想です(笑)。もともとはサロンワークをしていて、「この子、男に生まれてきたらカッコいいな」とか「この人、女に生まれてたらカワイイのに」とか、すごい単純なところからなんですけど。カバー曲でも、オリジナルは男性のシリアスな感じの歌だけど、女の人が歌ったらパワフルでめちゃくちゃカッコいいとか、それと同じような感じ。同じ曲だけど、男女の違いでこんなに変わる、という感じにしたいんです。意外と身近なところからの発想ですよね。

同じく9月号の『ORIGINAL DESIGN』より。男性的な潔い髪をつくりたいと、デヴィッドリンチ監督の髪型から発想したベリーショート。切り込んだバックに対し、フロントのソフトなアシメ具合が対照的な作品。男女のボーダーをなくした自由な発想が印象的。

※後編(Q6~Q10)は、10月7日(月)アップ予定です。