山形県酒田発「白ばらヘアショー」をレポート!
『HEAVENS』小松 敦さんに伺いました!

白ばらヘアショーの様子

Photo : JUN TOGASHI、@チアキ

 1028日(月)、山形県酒田市にある昭和文化遺産、グランドキャバレー白ばらにおいて、東北エリアの美容師さんに向け、「白ばらヘアショー」が開催されました。昨年に続き2回目を迎えるこのイベントについて、主催者である『HEAVENS』小松 敦さんに、その主旨や様子について伺いました。

 

●まずは、ダイジェストでヘアショーの内容をご紹介します!

 

1部 ヘアショーコンテスト

東日本の美容師さんたち、岩手県盛岡市の『collete HAIR』菊池貴史さん、山形県酒田市の『picasso forti』堀 美菜子さん、新潟県新潟市の『SNIPS DOES』富樫教之さん、山形県鶴岡市の『puLL』床 和喜さん、秋田県秋田市の『nouty』伊藤大輔さん、そして仙台出身で千葉県松戸市の『Half moon』鈴木光也さんの6名が登場。

6人がそれぞれ、昭和遺産である「白ばら」のイメージに合うヘアショーを披露。見せるだけではなく、最後には、最もクオリティの高いショーを披露した人にグランプリを贈るという、コンテスト形式になっているのがポイントです。

 司会進行と審査を務めたのは、小松さんと『HYSTERIA』近藤繁一さん。小松さんと近藤さんは元々プライベートでも仲が良く、最近ではお2人でライブセミナー「チョッキン!」を行っているという関係。近藤さんは、この「白ばらヘアショー」には去年から参加していて、お2人の絶妙の掛け合いで、ステージは盛り上がりました。

 

「白ばら」のイメージに合わせ、6人が個性的なステージを披露。

そして、グランプリを獲得したのは、紅一点、地元・酒田市の堀 美菜子さん。

最もモデルの切り幅が大きかったこと、仕事の流れに無駄もなくスピード感が良かったことなどから、小松さんと近藤さんがジャッジ。地元の女性美容師としてクリエイションにこだわって仕事をしているイメージが伝わってくる内容だったそうです。

2部 『HEAVENS』チームのヘアショー

『HEAVENS』ステージの様子

出演者は、長谷川直樹さん、細井 豊さん、世良田奏大さん、野崎秀幸さん、小林加奈さん。

『HEAVENS』としてのステージは東京でもレア。それを今回は、代表である小松さんの地元で行うことになりました。『サザエさん』のような昭和の家族をイメージしたモデルさんを、カットでどんどん変身させていくことで、「人はヘアで変われる」ことを、この地域の人に伝える内容でした。

ステージで披露したモデルさんたち

そして、表彰式の後にはサプライズとして、小松さんと近藤さんのステージが! お2人が初見のモデルさんをカットしていきました。シンプルな仕事で一気にスタイルチェンジしていく姿を通して、キャリアがある美容師も、常に新鮮な意識でいることが大切だということを伝えたかったそうです。

●ここからは、小松さんにお話を伺っていきます。

――そもそも、「白ばらヘアショー」を主催することになったきっかけを教えてください。

僕が山形県鶴岡市の出身ということもあり、5~6年前から、山形県内で開催されるセミナーに呼んでいただいていたのですが、集まってくれた人たちがとても熱心で、世代を超えて興味を持ってもらえることをすごく有難いなと思っていました。東北は美容のイベントが少ない場所ですが、みんなチャンスがあれば参加したいんだなということも実感ていました。

それと前後して、今回のヘアショーの舞台となった酒田市のグランドキャバレー白ばらの存在を知ったんです。酒田市は貿易港として栄えた町で、「白ばら」は当時の大人たちの社交場として賑わっていたそうです。時代を経て、近年では時々使われるだけになっていたところ、数年前いよいよ取り壊しかとなったときに、有志がクラウドファウンディングで資金を募り、修復工事をして保存していこうという動きがあったんです。

僕も興味を持ったのですが、出資するにしても一度その場所を見てみたいと思って訪ねたところ、「白ばら」の持つ独特のムードに強く惹かれたんです。往時の華やかさや賑やかさが感じられる空間は、100~150人ほどが動員できると聞き、これはアイデア次第でいろんなことができるんじゃないか、一出資者として参加するよりも、美容師の僕だからこそできる形で、この空間を残す手伝いができたらと考えるようになり、ヘアショー開催へと動き始めました。

グランドキャバレー「白ばら」の外観。昭和レトロな雰囲気が懐かしい

――「白ばらヘアショー」を開催するにあたっての思いを教えてください。

先ほど話したように、東北はセミナーの機会も少ない上、ヘアショーという活動は皆無に近いエリアです。そういう場所でクリエイティブなんていう大げさなことではなく、何か面白いことをやっているから見に行こうとか、美容って面白いなと感じてもらえる機会をつくりたかったというのが一番です。ヘアショーを通して、白ばらという空間の再生とか、地域の活性化とか、美容の価値向上につながっていけばと考えました。

そのため、ただ東京から僕が行ってヘアショーをするのではなく、地元の美容師さんを巻き込んでいくことを大切にしました。昨年は東北を中心に参加美容師さんをキャスティングしてヘアショーを開催し、僕も単独でステージに立ちました。

――そして、2回目となる今年は、さらに新しいスタイルで行ったそうですね。

昨年やってみて、このイベントを続けていくのだとしたら、ここに参加する東北の美容師さんたちの経験の場となったらいいんじゃないかと「ヘアショーのコンテスト」という形を思いついたんです。それなら、もともとショーをやっていた白ばらという空間も活かせるし、コンテストというワクワク感も味わえて、見に来てくれた人も楽しむことができますよね。

今回のパンフレット。レトロなイラストがポイント

――見に来てくれた人が楽しめるように、こだわった点を教えてください。

一つは、参加者のキャスティングですね。これまで僕が関わってきたコンテストやイベントで活躍していたり注目している人たち、地元の酒田市のサロンでクリエイティブ活動を行っている女性美容師さんなど、東北、東日本をメインに6人を選出しました(メンバーは前述)。ヘアショーを始めて3年くらいとか、一人でステージに立つのは初めてというキャリアの人たちだったので、みんないい経験になったと言ってくれました。

もう一つこだわったのは、コンテスト形式であっても、「ヘアショー」として成立していること。だから、各出し物の内容についても、すべて僕が細かくイニシアチブをとりました。僕も経験がありますが、自由に好きなことをやってくださいとなると、イベント全体の統一感が無く、バラバラになってしまうんです。単純なケアレスミスでいうと、同じ曲を使ってしまうとか、同じヘアスタイルをつくるとか、衣装が似ているとか、こういうのが一番つまらないんです。1人ひとりの満足ではなくイベント全体のクオリティと成功を追求して、SNSとかメッセンジャーでコンセンサスをとりながら、半年をかけてじっくりと準備していきました。

まずは、今回のヘアショーの主旨や僕の思いを伝えるところから始めました。白ばらに行ったことがない人は、行ってみて実際に空間を感じてこいと。そうすれば、僕の言っている意味がわかるからと。こうやってコンセンサスを重ねることで、参加者みんなでイベントとして一つのものを成功させようという共通意識が芽生えて、結果成功につながるんだと思うんです。それはコンテストに出た6人だけでなく、2部でヘアショーをした『HEAVENS』のスタッフたちも一緒。彼らにも、イベントの主旨を理解してもらって、コンテスト出場者と内容を調整しながら、ショーを構成していきました。

地元の新聞にも取り上げられ、注目を集めていた

――お客様たちの反応はいかがでしたか?

地元はもちろん東北各県、新潟、首都圏からも見に来てくださって、若い人も多かったけれど、中には僕くらいの世代の人もちらほらいらっしゃいましたね。人の仕事を見るのはすごく刺激になる、自分ではしっかりやっているつもりだったけど、あんなに早くカットできないとか、あんなスタイルはイメージできないとか、みんな面白がってくれているのが嬉しいですよね。自分でもクリエイションをやっているけれど、今回のショーを見て刺激を受けたのでもっと極めたいとか、自分もステージに立ちたいっていう立候補の声もありましたよ。

――立候補も出るなんて、来年以降も楽しみですね!

もちろんです。白ばらが続く限りは頑張っていこうと思っているから、来年もやりますよ。まだ、計画段階ですが、来年は2回イベントを開催できたらと考えているんです。秋には「白ばらヘアショー」をやるんですが、春くらいに「白ばらビューティセミナー」というのをやりたいんです。今回見に来てくださった人の中にもいましたが、今は1人経営の人がすごく多いんですよね。そういう人たち向けに、1人経営の成功例とか、それまでに考えたこと、やってきたこと、1人では解決できない悩みとかリアルな問題を取り上げてセミナーを開催していきたい。…というふうに、いろんな妄想が出てきています。

ショーを見たりセミナーに参加したりすることで、皆さんが自分の仕事の面白さや魅力を再確認して、お客様をきれいにしてあげることが、街やそこに暮らす人たちにとって意味があることなんだ、誇りを持って仕事をしようって思ってくれる、ちょっとしたきっかけになったら嬉しいですね。

興味のある人は、来年ぜひ参加してください!

プロフィール
小松 敦(こまつ・あつし)
山形県鶴岡市出身。1993年、『HEAVENS』設立。現在は、表参道と代々木八幡に3店舗を展開。独自の技術論「ツーセクションカット」やアグレッシブなヘアデザインで注目され、JHA各賞を受賞。