【シザーケースの中身を見せて!】『MINX ginza central』飯野 誠さんの愛用品を紹介
美容師の皆さんのシザーケースや、シザーなどの愛用品をご紹介していただくこのコーナー。第1回目は、卓越したカット技術に定評があり、弊誌2月号の「味変レイヤー」のカットテク企画もご担当をいただいている『MINX』飯野 誠さんが登場です。
——どんなシザーケースをお使いですか?
スタイリストになった時に、当時の社長(現会長・高橋マサトモ氏)からもらったのがこの「シザーベルト」です。昔はスタイリストデビューして、既定の売り上げなどをクリアすると、正式にスタイリストになったと認定されて、このシザーベルトが渡されたんです。「これを持つと一人前」みたいな感じがあって、もらえた時は本当に嬉しかったですね。デビューしてもう20年弱になりますが、今も愛用しています。
『MINX』のロゴが入ったシザーベルト。長年使い込まれたことで、身体にフィットするようになっている。
——素敵なシザーベルトですね。愛用されている様子が伝わってきます。それでは今度はシザーについてお伺いします。普段シザーはどんなものをお使いですか?
右から順にシザー2本、セニングシザー2本、レザー1本の計5本。
このシザー(右)は、現社長の岡村(享央氏)から譲り受けたもので、現在メインで使っているものです。岡村とはカット講習でよく一緒に時間を過ごすのですが、ある時、カット講師もしていることだし、シザーは良いものを使ったほうが良いという話になり、2年前くらいに岡村が使っていたものをいただきました。
これはあまり大きいタイプではなくて、6インチくらいですかね。もともと小さいシザーで小回り良く切るのが好きでしたし、形的にも手にフィットしやすくて、とても気に入っています。直線的につくられているので、ラインを綺麗につくりやすいのも特徴。切っ先の切れ味もいいのでチェックカットにも使いやすく、ベーシックからつくりやすいシザーになっています。
このシザー(右から2番目)は、スタイリストになった時に、初めて自分で選んで買ったものです。19年、20年前くらいですかね。その頃は自分の中にも情報が少なかったので、手のフィット感に加えて、ナイフっぽい形がかっこいいなあと思って選びました。そのハサミ屋さん曰くですが、支点から切っ先に向けて最小限に力が伝わるようにハサミを湾曲させてつくっているそうで、だからちょっと独特な形をしているみたいです。
岡村からシザーをもらう2年前までは、こちらをメインシザーとして使っていましたが、今はサブとして活用。ドライカット時のスライドカットや、ちょっとした質感をつくる時などに使えるように、柳刃っぽく、あえて切れない感じに少し改良してもらっています。
——それぞれ特徴が違っていて面白いですね。セニングシザーはいかがでしょうか?
メインのセニングシザー(写真右から3番目)は、削ぎ率は28%のもの。主に毛量調整やウエットの状態で取る際に用いています。刃先のクシのところが斜めにつくられているので、セニングを入れた時にラインが残りづらくなっているんです。斜めになっていることで、ラインが良い感じでボケてくれたり、閉じたまま引いても引っかからないような形になっています。
このセニングは持ち手がメガネになっているので、向きを持ち替えることが可能。動刃と静刃を持ち替えることで、同じシザーですが、削ぎ率の%を変えることができるんです。まっすぐになっている静刃のほうを軸にして切るとしっかりと削ぎ率28%で切れるのですが、逆に動刃を軸にすると髪の逃げる量が増えるので、削ぎ率を28%よりも少なくすることができるんです。
こちらのセニングシザー(写真右から4番目)は、メインで使っているものよりも削ぎ率が低い23〜24%のもの。ドライカット時や、質感調整、エンズセニングなどで少しぼかしたい時に使う他、元々量感が少ない方を切る際にはこちらをメインで使ったりといった使い分けをしています。
刃先に小さな山が3つあるのですが、その隙間に入った髪は切られないので、通常のセニングよりも逃げるタイプですね。切り口がジグザグになるので、よりボケてくれるのが特徴です。これもスタイリストになった時に買ったので、もう20年弱くらい愛用しています。
——セニングの刃先がこんなに種類があるとは知りませんでした! それぞれの用途に応じた使い分けをされているんですね。ところで、シザーのメンテナンスはどのようにされているんですか?
シザー、セニングシザー共に、メンテナンスは2か月に一回くらいのペースで、メーカーの方にお願いして研ぎに来ていただいてます。刃の重なり具合などは切ってみないと分からないので、その場で微調整もしていただいています。
——レザーについても教えていただけますか? レザーは1本のようですが、どのようなこだわりがあるのでしょうか?
これは正直、こだわって買ったものではないですね(笑)。わりとどこでも手に入るものだと思います。レザーは使うことが少ないので、一応持っているという感じです。僕の場合はもみあげや顔周りの毛を馴染ませる時などにポイントで使ったりする程度で、全体を切るのに使うことはほとんどありません。
でも今はショートデザインをレザーで切る方もいらっしゃるじゃないですか。シザーでつくるよりも柔らかいテイストをつくれるので、そういうのを練習してみたりはしてますね。どちらかと言うとシザーだと重ねながらウエイトラインをつくっていきますが、レザーだと切りながらつくれるので、時短などの効果も出しやすいのかなと思います。ただ、レザーで切られることに抵抗ある方も意外と多いので、実際のサロンワークではその方の様子を見極めながら用いることが必要だと思っています。
——最後になりましたが、シザー選びで大切なことはなんだと思いますか?
重かったり、手に合わない状態になっていると腱鞘炎になったりもしますから、フィット感というのは特に大切だと思います。毎日使うものなので、見た目だけでなく、使いやすさをしっかり吟味することも必要。自分に合うシザーを見つけるには、信頼のできるハサミ屋さんとの出会いというのも大きいですね。その後のメンテナンスも含めて長く付き合っていくことで、より自分に合う、求める形に近づけていくことができると思います。自分の施術のこだわりを反映できるようなシザーとは一体どういうものなのか、改めて考えてみても良いかもしれませんね。
——飯野さん、シザーのお話、とても興味深かったです。ありがとうございました!
飯野 誠/ MINX
いいの・まこと 1980 年生まれ、東京都出身。日本美容専門学校卒業後、『MINX』に入社。現在、執行役員と共に、『MINX ginza central』のディレクターを務め、顧客のリピート率は90%を超える。カット講師育成のスペシャリストでもあり、セミナーや美容学校講師を多く務める。インスタアカウントは@mkto.iino。