初代ロッドからたゆまぬ改良を続け、 薬液の浸透の良さと巻きやすさを実現

長く売れている「ヒット製品」には、愛される理由があります。
このコーナーでは、そんな珠玉の逸品を取り上げ、ヒットのヒミツを大解剖。
ユーザーに愛される理由を様々な角度から探ります。

 

『 ニューエバーロッド F型 』

 


1975年の初代から改良を続け、1992年に3代目のF型が登場


美容学校に入学し、ワインディングロッドを手渡された瞬間に、これから美容師になるんだと強く実感したという声を聞いたことがある。それくらい、美容師にとって欠かせないアイテムの一つがワインディングロッドだ。
今回紹介する安元化成株式会社の『ニューエバーロッドF』は、多くの美容師に使用される定番ロッドだが、その開発の背景には様々な物語があったということで、安元化成株式会社専務取締役の佐久間建一さんにお話を聞いてきた。
ニューエバーロッドシリーズの初代は1975年に登場した。こちらは『Y型』と呼ばれる商品で、横の深い溝と中央に空洞が開いたロッドを見たことがある方も多いだろう。約50年前に登場した商品だが、現在も愛用する美容師が少なくなく、実はまだ廃盤にはなっていない(素材は改良)。
この『Y型』発売後、さらなる薬液の浸透しやすさや巻きやすさを追求し、改良を重ねて生まれたのが『A型』だ。この『A型』について、佐久間さんはこう話す。
「現在は廃盤となっている商品ですが、現行品の『F型』と形状は同じで、薬液が浸透しやすいように全体に斜めの細い溝が施されています」
この溝の効果によって毛束の内側に均一に薬液が浸透し、ウェーブ効率が高くなる。さらに溝の形はV字型になっており、無駄な薬液が溜まりにくい。
そしてもう一つ、「ニューエバーロッドは巻きやすい」という声を聞くが、その秘密が表面に施されたシボ加工(凸型の細かな突起)だ。
「実はこのシボ加工、良く見てみると突起が均等ではないんです。あえて金型を職人が手で打ってつくることで、機械ではできない不均等さが生まれ、それが、髪の毛の絡みつきの良さにつながっています」
現行の『F型』が登場したのは、1992年。より割れにくく軽量なロッドを開発するために、『A型』で使われていたスチロール素材から、特殊配合のエラストマー樹脂に変更した。
「このエラストマー樹脂は車の内装に使用されるような丈夫な素材で、割れにくく軽量化が進みました」
そのため、使い終わったロッドを洗浄する時に水中でペーパーが沈みロッドが浮き上がってくれるので、片づけが楽という声もよく聞くそうだ。


自社工場がある強みを活かした
フレキシブルなモノづくりと対応力が特徴


ロッドは美容師のこだわりが詰まる部分でもあるため、ラインナップが増え続けていると佐久間さん。
「50年前に発売した『Y型』もまだ需要がありますし、さらに若い方では見たことがないような直径2ミリロッドなどの極細ロッドにも、理容の方を中心に根強いファンがいらっしゃいます。またビッグロッドや円すいロッド、軽量ロッドなど、様々な美容師の方に協力いただき、現場の声を反映して多様なロッドが生まれてきました」
こうした製品を開発できるのは、自社工場があることの強みだろう。

取材の最後に、企画~製造までを自社でできる老舗ならではのモノづくりを武器に、今後も現場のニーズをキャッチした新製品開発とクオリティの追求を続けていきたいと佐久間さんは語ってくれた。

 

>>>まとめ

POINT 01

特殊配合のエラストマー樹脂を使用して、軽量化と耐久性を実現

POINT 02

斜めの溝の効果で、内側のつけムラを防止して浸透力を高める

POINT 03

現場のニーズに応えた様々なロッドバリエーションで、業界シェアNo.1

 

取材協力:安元化成株式会社

*月刊『SHINBIYO』2023年6月号 連載「売れてる逸品!」vol.3より転載