一木 登紀男
CUTICULAホールディングス CEO
教えてください!
超微還元トリートメントが生まれた理由
いま注目の、あの製品が生まれた背景を 発売メーカーのトップに直撃インタビュー! 製品に込めた思い、企業として大切にしていることなど、 根掘り葉掘りお聞きします。今月は3月に発売された超微還元トリートメントシステム『mirAI』を 中心にCUTICULAの開発スタンスまで一木代表に伺いました。
“パーマは髪が傷む”を払拭するために
—— これまで発売された製品を辿ってみると、御社の薬剤にはこだわりが感じられるものが多いですね。一木代表は美容師出身ということもあり、ダメージを与えずにパーマをかけたいという点においては、特別な思いがあったのではないでしょうか。
一木 僕が考えていたことは昔からずっと同じで、美容室のメニューで髪が傷んでしまっては本末転倒だろうということ。CUTICULAで発売する製品はすべて、「パーマって髪が傷むんでしょ?」というお客様の先入観を取り除くような製品でなければいけないと考えてきました。
—— 一般の消費者における「パーマ=髪が傷む」というイメージは根強いですね。
一木 マイナスイメージを払拭するため、2010年に発売した『ラミダスカールシステム』ではパーマの呼称をカールに置き換えたんです。この『ラミダスカールシステム』は、当時としてはかなり早い段階で、コルテックスではなくキューティクルに働きかけてカールをつくるという製品として話題になりました。長年使い続けているファンの多い製品で、特にダメージケアにこだわりの強い美容師さんに選んでもらっている印象です。
S-S結合を「切る」から「繋げる」時代へ
—— そして今年、新製品としてAIストレート&AIカール『mirAI』が発売されました。これは難しい薬剤知識は必要ない、というのが特徴だと聞いています。
一木 ここ数年でハイトーンカラーやブリーチがポピュラーになり、複雑な履歴の髪が大変増えています。次の施術をするにはなかなか厄介な状況なわけですが、『mirAI』はそうした髪にも、ダメージの見極めをしなくても対応できます。ブリーチによるハイダメージ毛にも使える。ハイライト等によって縦にムラができている髪にも、『mirAI』なら細かい塗り分けなしに施術ができるのです。
—— ダメージの見極めをしなくても対応できるということは、薬剤が自分で診断して施術をしてくれるような感覚で使えそうですね。
一木 『mirAI』で採用しているグアニルシステインという成分は、健康毛には還元剤として働き、S-S結合を切断します。ところがダメージ毛にはトリートメントとして働くんですよ。ダメージ毛のシステイン酸にグアニルシステインが作用し、S-S結合の架橋をつくってくれるんです。だから、1本の髪の毛に健康な部分とダメージしている部分が混在していても、塗り分けせずに施術ができるのです。
トリートメントで伸ばす、 トリートメントで曲げる
—— 健康毛とダメージ毛の大きな違いであるシステイン酸の存在によって、薬剤の働きが変わってくるのですね。ちなみにグアニルシステインの他に、GMTやブチロラクトンチオールといった還元剤は配合されていますか?
一木 使用していません。必要以上に還元剤を使用しないという開発の原点がありましたから、使用量も1.5%に留めています。巷では、酸性タイプの薬剤を使って施術をする場合、必要以上に還元剤を使用しがちです。そして酸化が十分にできていないと、時間が経ってから髪がビビり始めたり、硬くなったりします。こうした酸化不足を解消するトリートメントとして開発されたのが『mirAI』なんです。
——『mirAI』のブランドサイトには、いわゆる「ビビリ毛」に近い状態の髪を、きれいにストレートにしたりカールをつけたりといった事例が紹介されていますね。
一木 アルカリ剤やヘアマニキュアに多く含まれるアルコールによって内部の結合が外れると、水が内部に浸透して親水性に変化してしまいます。その結果、毛髪の弾力が低下したり、水で髪が膨潤してビビリ毛になるのです。『mirAI』はビビリ毛の親水基にノンシュリンク(=縮まらない)成分を素早く結合させ、髪内部を疎水性に変化させて外部から水が入りにくい状態にするんです。その上でストレートなりカールなりの形成をしていくので、難しい状態の髪でもきれいに仕上がるのです。
—— パーマは怖い、と苦手意識を持っている美容師さんにも、挑戦しやすい設計になっているのですね。
一木 『mirAI』で苦手意識をなくして自信をつけて、もっと色々挑戦してみたいな、と思ったら『ラミダスカールシステム』も使ってみて欲しいですね。より細かい対応が可能になりますから、施術の可能性がもっと広がると思いますよ。
美容師としてもメーカーの代表としても変わらぬ「パーマ愛」(CUTICULAの表現ではカール愛ですね)が伝わってくる取材でした。製品のクオリティにこだわるだけでなく、今後は販促にも新しい方法を試していくとのこと。新しいファン層獲得も期待できそうです。
>>> PROFILE
一木登紀男/TOKIO ICHIKI
1959年生まれ、三重県伊勢出身。CUTICULAホールディングスCEO。名古屋市の美容室『BUSH』を経営するオーナーでもある。長年にわたりパーマ研究を続け、レブリン酸、酸熱トリートメント、等電点ストレートなど新しい成分や組成を早くから取り入れた製品を開発。「美容師のためになる本物だけを追求」が製品開発のモットー。
AIストレート&AIカール 『mirAI』
ブリーチやハイライトなど複雑な履歴の髪でも、難しい毛髪診断なしにカールやストレートがつくれる超微還元トリートメントシステム。薬剤が髪の状態を“診断”し、自動的に反応するため、ダメージを考慮した塗り分けが不要になっている。過剰に還元剤を使用していないので、酸化不足で起こるダメージを回避できる。画像の『mirAI STRAIGHT』『mirAI CURL』の他に、6月にはブースターアイテム『mirAI PLUS』や、クリームとリキッド形状を揃えた専用2液も追加発売される。
取材協力:株式会社CUTICULA
*月刊『SHINBIYO』2023年7月号 連載「トップに聞く!」vol.4より転載