インボイスが業務委託潰しと言われる訳 その2.

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前回は、インボイス制度と、そこに関係する消費税についての復習をしました。

またそこで、この2つを復習すると、「インボイス制度導入=業務委託潰し」と指摘される理由についての理解が深まるともお話ししました。

 

いよいよ今回は、その本題です。

「なぜ、インボイス制度が業務委託潰しと言われるのか」について踏み込んでみたいと思います。

 

前回は、消費税の実質、益税について解説しました。年間の売り上げ(税込み)が1,000万円以下の事業所は消費税負担の義務がないという話からの派生です。

つまり、年間の売り上げ(税込み)が1,000万円の事業所は、その消費税分である100万円を支払う必要がないわけです。

そして、この益税分が不公平であるという声も挙がってきているという話もしました。

 

実は、今回のインボイス制度導入には、結果的には、中小零細企業が恩恵を受けていた消費税の益税分を納税させる仕組みができていたのです。

「えっ? でも、さっき年間売り上げが1,000万円以下は消費税納税の義務はないって言ったばっかじゃん?」

そう、その通りです。課税売り上げ1,000万円以下は消費税の支払い義務はありません。特にあなたが一人でサロンを経営されている方なら、免税業者のままで特に大きな問題はありません。

 

問題は、あなたが業務委託の美容師だったケースです。多くの場合、あなたを採用しているサロンは課税事業者であると考えられます。課税事業者なので、当然、インボイスも取得済みなはずです。

 

このケース、つまり、

・サロン=インボイス取得済みの課税事業者

・業務委託=インボイス未取得の免税事業者

という関係にあった時、問題が生じるのです。

 

ここでさらに復習をひとつ。「仕入税額控除」という言葉を聞いたことがありますか?

この仕組みを知ると、業務委託潰しの意味がより鮮明に分かります。なので、もうちょっとだけお付き合いください!

 

仕入税額控除とは、文字通り、お客様が支払った消費税分から、仕入時にサロンが支払った消費税分が控除させる仕組みです。

式で表すと、「消費税納税額=販売消費税ー仕入消費税」。これは消費税の二重払いを防止する仕組みと言われています。

言葉で説明すると、ややっこしいので、シャンプーの仕入と販売を例に、以下に図で整理しました。

インボイスオンラインセミナー動画より

 

上の図は、700円で仕入れたシャンプーを、お客様に1,000円で売るケースです。

この時、課税仕入額は700円なので、消費税は10%で70円、つまり仕入に「770円」かかったことになります。

またお客様に販売する際の値段は、1,000円。こちらも税率は10%になり、1,100円で販売するわけです。

で、このシャンプーに関して、サロンが納税する消費税額は、販売消費税ー仕入消費税なので、100円ー70円。つまり、「30円」を納税することになります。

 

この仕入税額控除を踏まえた上で、ここからが本題です。

実は、これと同じメカニズムが、業務委託のあなたとサロンとの関係でも発生しているのです。下の図を見てください。

例えば、あなたが採用されたサロンがインボイス取得済みの課税事業者で、あなたが年間売り上げが800万円インボイス未取得の免税事業者だったと仮定します。またサロンとの歩合の設定は6割とします。

 

まず、インボイス制度施行前の話から。

800万円の6割なので、480万円があなたの利益になります。サロン側からすると、これはあなたという商品を480万円で仕入れたことと同じ。ちなみにこの時の消費税は、48万円です。

 

従来は、480万円+48万円=528万円があなたに支払われていました。

そしてサロン側は、売り上げ消費税の80万円から仕入消費税の48万円を差し引いた32万円を消費税として納税していました。

 

これが、インボイス制度施行後になると、あなたがインボイス未取得の免税事業者だった場合、48万円の仕入税額控除が使えなくなってしまうのです。

 

正確に言うと、現状は48万円の8割しか控除されなくなる。つまり38.4万円しか控除されず、残りの9.6万円は実質ナシになってしまうのです。

しかも8割控除が可能なのは、2026年まで。それ以降は5割控除になり、サロン側からしたらインボイス未取得の業務委託を雇うとそれだけ負担が高くなるのです。

さらに言うと、5割控除がなくなる2029年10月以降は、実質、インボイス未取得事業者の領収書は控除の対象外となる見込みです。

 

そういう流れもあり、某大手広告代理店などは、「インボイスを取得していない下請け業者とは取引きをしない」と公然と発言したりするわけです。

当然、サロン側も先ほどの9.6万円分をどうするか考えざるを得なくなります。なので、業務委託に対して、「免税事業者のままなら、控除されない9.6万円分を給与から差し引かせて欲しい」。そんな提案をすることもあるわけです。

提案された業務委託からすると、9.6万円分の年収ダウンです。インボイスが施行されたことにより、年収が約10万円分減ったことになります。そう、これが、「インボイス=業務委託潰し」と言われるものの正体です。

 

では、そうした中で、業務委託の美容師の皆さんは、どんな戦略を取れば良いか。

去る10月3日に、弊社が主催した「インボイス制度対応セミナー」では、そのためのヒントをいくつか提示しております。

厳しい現状をサバイブするための実践的な内容をまとめています。業務委託の美容師の方はもちろん、業務委託を採用しているオーナーの方も必見の内容です。

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