「水の膜で髪の表面を覆う」がコンセプト。 さらっとした質感に仕上がるアウトバストリートメント

長く売れている「ヒット製品」には、愛される理由があります。
このコーナーでは、そんな珠玉の逸品を取り上げ、ヒットのヒミツを大解剖。
ユーザーに愛される理由を様々な角度から探ります。

ケミカリングボンドウォーター
『 ウォーターベール 』

 


一時代を築いたオイルブームの
臭い問題にクローズアップ


ヘアカラーや加齢による乾燥、元々のクセ毛の影響など原因は様々だが、髪のパサつきやまとまりにくさに悩んでいる人は多い。近年オイル系のアウトバストリートメントがヒットしたのは、こうした悩みの髪をまとまりやすくし、ツヤも与えるという利点が評価されてのことだろう。また、シリコンに対して悪印象が広まり、「自然由来」「天然系」というイメージの強いオイルが好まれるようになったという背景もあると思われる。

ただし、最近ではデメリットの一つとして「時間が経つと臭う」という点を上げる消費者も増えてきた。

「オイルそのものは無臭でも、髪につけて空気に触れ、紫外線に当たるうちに酸化されて臭いが出てくるんです」と語るのは株式会社CUTICULAの一木登紀男CEO。オイルをつけた髪に、ドライヤーやアイロンを使って熱を加えることも酸化を進める要因になっているという。

オイルのもう一つの問題として、髪の糖化を促進してしまう点も一木氏は指摘している。高齢化社会に突入した日本では、加齢による肌の老化の原因として糖化が認知されるようになった。髪も肌と同じで、糖化により老化するとされている。老化した髪というとエイジング毛を想像するかもしれないが、実は若い世代でも、ブリーチ毛やハイトーンカラーをした髪は老化した髪なのだそう。こうした髪にオイルをつけると、さらに糖化が進むと一木氏は警告する。

「老化した髪はどういう状況かというと、糖化とカルボニル化が起きているんですね。日常的にオイルを使っていると、それを促進してしまうんです。シャンプー後の髪にオイルをつけるのも、脂肪酸を落とすのがシャンプーの目的なのに、その後また油を足していることになります」


エイジング毛だけじゃない。
若い世代でも髪は老化する 


2021年に同社から発売された『ケミカリングボンドウォーター』は、オイルを使わずに髪のパサつきを抑え、まとまりやすくしたいという美容師やサロンユーザーに評価されている製品。「水の膜で髪の表面を覆う」をコンセプトに開発されただけあって、ベタつかないのにツルツル、さらっとした質感に仕上がる。水の膜というと時間が経つにつれて蒸発してしまいそうだが、この製品の「髪の表面を水分のベールで覆うような効果」は長時間持続する。

「『ケミカリングボンドウォーター』にはパルミトイルペプチド-18という界面活性剤を使っています。これは保水系の界面活性剤で、親油基である脂肪酸と、親水基であるペプチドから成っている。そしてパルミトイルペプチド-18は、ひも状ミセルという特殊なかたまりを形成する性質を持っているんです。このひも状ミセルが連なって毛髪のアミノ基にまとわりついて、水の膜を形成し、毛髪の表面を蒸発しない水分のベールで覆うことができるんです。この技術は元々化粧品のファンデーションに使われていたもので、製品化するには高価なので、肌にはともかく髪には贅沢とされていたんですよ」(一木氏)


毛髪の表面に
水の膜を張る方法 


オイルを使っていないのに、オイル同様に髪の表面が乾かない効果を持つ『ケミカリングボンドウォーター』。「香料も油の一種」なので無香料にしているというこだわりぶりだ。

使用方法は一般のアウトバストリートメントとあまり変わらない。シャンプー後のタオルドライした髪に塗布して軽くコーミング、その後ドライヤーで乾かすだけだ。お手軽なのにまとまりにくかった髪がしっとり落ち着き、その効果が持続する、冒頭で上がったようなオイルが酸化した後の臭い問題もないということで、一度使った人は手放せなくなる模様。美容師ではなく一般の消費者から、どうやって購入したらいいのかとメーカーに直接問い合わせがあったりもするそうだ。サロンメニューに取り入れて使われるケースも多く、特に縮毛矯正や髪質改善メニューとの組み合わせが多く見られる。2021年の発売当初と比べると、出荷は3倍に増えているという。

「界面活性剤と製造方法にはずっとこだわってきたんです。パルミトイルペプチド-18はいわば水素結合がコントロールできる界面活性剤。この特性を活かした製品にできているという手ごたえは当初からありましたね」(一木氏)

アウトバストリートメントは一般の消費者にとって最も日常的に使われるものだけに、時代や人々の気分が反映されやすい。ノンシリコンブームの影響で自然派が優勢になり、オイルがヒットしたが天然成分ゆえの問題も起こってきた。そこに登場したのが『ケミカリングボンドウォーター』というわけで、この先も「科学の答え」として市場の一角を占めていきそうだ。

 

>>>売れてる3つのPOINT!

POINT 01
オイルのような臭い問題がない

POINT 02
表面を覆う水のベール効果

POINT 03
うねる・乾燥・広がる髪もしっとりまとまる

 

取材協力:株式会社CUTICULA
月刊『SHINBIYO』2024年2月号  連載「売れてる逸品!」vol.7より転載