ニューエバーロッド F32
1975年に初代ロッドを発売。改良を重ねて 3代目となる進化系バージョン
全体に刻まれた斜めの溝が、パーマのかかりムラを防止
表面に散りばめられた凸型シボ加工で、ストレスなくワインディング
混乱させたくないという配慮から、初代ロッドからサイズごとの色を変えずに展開
使ったことがない人がいないくらいの定番ロッド
パーマ用のワインディングロッドと言えば、美容師にとってサロンワークになくてはならないアイテムの1つ。特に今回紹介する、安元化成株式会社の『ニューエバーロッドF』は定番中の定番商品と言えよう。この『F型』は、1975 年に発売された初代の『Y型』から数えると、2代目の『A型』に続く3代目となる製品。1992年に発売されたこの『F型』はどのような背景で生まれたのか、同社専務取締役の佐久間健一さんにロッド開発にまつわる歴史について話を聞いた。
「美容師の方に作業がしやすい商品を提供したいということで、弊社のロッド開発の歴史が始まりました。常に意識しているのが巻きやすさ、ウエーブ効率、そして耐久性の3つです。まずニューエバーシリーズのベースとなっている『Y型』ですが、ロッドに横の溝をつけ、薬液の浸透のしやすさと軽量化を考えて、中央が空洞になっているデザインを採用しました」
『Y型』は、実は今でもベテランの美容師の方を中心に、『使いやすい』と根強いファンが多く、廃盤にせずに販売しているのだそう。そして次に開発されたのが、F型と形状が同じ『A型』だ。薬液が均一に行き渡ることを考えて開発した『A型』の一番の特徴は、全体に刻まれた斜めの細い溝。この斜めの溝があることで、巻き込んだ毛束の内側に均一に薬液が浸透し、ウエーブ効率が安定する。この溝はV字型になっており溝の内側に無駄な薬液が溜まりにくいように配慮されている。
またロッドの表面が細かなシボ加工(凸型の突起)されているのも特徴だ。
「表面にザラつきを加えることで、髪の毛に絡みやすくなり、巻きやすさが格段にアップしました」
と佐久間さんは話す。こうした斜めの溝と表面の凸型シボ加工のおかげで、ウエーブ効率と巻きやすさは各段にアップした。しかし、解決できなかった問題が1つあった。それは、硬い床に落とすとフランジ(ゴムをひっかける部分)が割れることがあるという点だった。
素材を見直し、割れにくく軽量なロッドを開発
そこで『F型』の開発に当たっては素材から見直し、これまでのスチロール素材から、特殊配合されたエラストマー樹脂に変更。これによって割れにくくなり、軽量化も進んだ。そのため、ワインディングし終わったロッドをシンクや桶の中に入れて洗う時に、ロッドが浮き上がるため、ペーパーと分離しやすく片付けがしやすくなったという声が届いたのだそう。
同社は、美容師の声に合わせたフレキシブルなモノづくりを心がけていると佐久間さんは話す。
「それを可能にしているのが、自社工場の存在です。例えば『F型』の表面のシボ加工は微妙な凹凸でテンションのかかり方が変わってくるのですが、美容師の方々に試作品を使用してもらい、その意見に合わせて微妙な調整を行いました。美容師の方が使いやすく、また時代に合わせたパーマデザインをつくりやすいように、バリエーションを豊富に揃えたいと考えていますが、そうした試作がすぐできるのも強みですね」
美容師の「もっとこういうロッドがほしい」という声に答え続け、当初15ミリまでしかなった『ニューエバーシリーズ』も今では32ミリまでと幅が広がった。さらにサイズや機能の多様なロッドも増えて、業界シェアNo.1を獲得している。
ロッドなどの日々使用する道具は、「あって当たり前」の空気のような存在だ。しかし使いやすさやウエーブ効率にこだわった長い開発の歴史があるということに思いをはせてみると、ロッド1つの見え方も変わってくるのではないだろうか。
>>>ニューエバーロッド F32 のまとめ
Point 1
様々なロッドバリエーションで現場の声に応え続けて、業界シェアNo.1に
Point 2
特殊配合のエラストマー樹脂で、巻きやすく割れにくく進化したF型ロッド
Point 3
自社工場がある強みを活かした、フレキシブルな商品開発で現場のニーズをキャッチ
取材協力:安元化成株式会社
*月刊『経営とサイエンス』2022年6月号 連載「売れてる一品!」より転載