2024年5月号ストパー特集の巻頭座談会、「平成・令和のストパーヒストリー」はいかがでしたでしょうか。
「アルカリ矯正の巨人」菊地克彦氏(Rescue-hair)、「酸性矯正のプリンス」岸口新志氏(AS)、「ケミカル施術のイリュージョニスト」YOSHI氏(Natural)という、レジェンド級の矯正達人たちが集結し(Zoomですが)、日本のストパーの歴史を振り返りつつ、今のストパー状況を分析するという、実に濃ゆ~い企画をお届けしました。
で、話はそこで終わるはずだったんですが、なにせ深夜1時半まで及んだこの座談会、最後の最後に、レジェンドたちの技術の奥義の話が飛び出してきたのです! これを皆様にお伝えしないのは、あまりにもったいない! ということで、こちらでスピンアウト企画としてご紹介させていただきます!
――最後の最後に、3人のスペシャルな奥義が飛び出てきたので、こちらに場所を移動して、座談会を続けさせていただきます!(ここに至るお話は、本誌をご覧くださいね)
そもそも菊地さんは髪質に合わせてAからHまで、6パターンの技法(※)を編み出していますよね?
菊地 現在、一番使うのはパターンBですね。これが最強で、すべてのクセを伸ばせることがもう分かっているんです。ポイントはブロー。要はフルウェットからのブローが一番理にかなっているんですよね。還元された毛髪を引っ張った状態で、一気に水を抜くことができるからです。逆に少しでも乾かすと、クセは若干戻ってしまう。するとその戻り分をリカバリーするために、アイロンの熱とテンションを強めるという選択となり、髪に負担をかけてしまいます。
程良い還元状態から無理なく伸ばすには、フルウェットからのブローが最も適している、というのが僕の中では確立した技術なんです。ただプラス1時間かかってしまうので、主流でやっている人は少ない。でも実験的に他の方法と比べてみると、伸びと仕上がりが全然違うことが分かりますよ。他の方法では、毛の生えている方向に自然に落ちる質感にならないんです。これはもう何百回も検証してきているので、やはり僕の中では、パターンBがアルカリ矯正では最強だと思っています。
――なるほど。突き詰めた結果ですね。
菊地 でもその過程で、当時アルカリでは対応できなかった髪を、岸口さんが酸性矯正で行っているのを見て、アルカリでもできるようになりたいと薬剤の減力方法を考え出したんですよ。
それからSNS時代になって、スタイリングの際にアイロンで仕上げた髪がたくさんアップされるようになり、僕はアイロン無しであの仕上がりになることを目指しました。今のブリーチ毛対応の矯正を見て、それをアルカリでもできるように試行錯誤したり。
――色々な技術を参考にしながら、常に進化させ続けている、と。
菊地 でもそれらすべての技術のポイントになっているのがブローなので、やはり自分の核はブロー技術にあるのかな、と思いますね。
その先には、ツインアイロンなどのアイロン技術の進化もあります。アイロンって、毛量が豊かな人や、厚い部分なら熱が一定に入りますが、薄い人や薄い部分は真ん中が抜けてしまいがちなんですよね。そのリスクを回避するのがツインアイロンなんです。自分のアカデミー以外で公開するのは、3月末に、岸口さんと合同で行ったセミナーが初でしたが。
――ブローにおける所作的な注意点って、どういうところなんですか?
菊地 全頭、毛の生えている方向に沿ってドライヤーの風とブラシを入れること。そのための立ち位置、姿勢、アイロンの持ち方、コードの回し方まで、物理的に全部割り出したマニュアルをつくりました。それが完成して、これまで伸びづらかった髪も伸びるようになりましたね。
――腕を固定して身体を引く感じってことですよね。それと、先程、岸口さんとYOSHIさんから出てきた「冷える瞬間の見極め」のお話がすごく面白かったです!
岸口 冷える瞬間までテンションを入れておくという話ですね? これはスタイリングの時のブローも、縮毛矯正のブローやアイロンも一緒で、とても大事なんですよ、本当に。
菊地 先程お話ししたように、矯正って結局「水」と「熱」と「テンション」の物理的操作が重要ですから。
YOSHI あと僕は、ハーフウェットからのアイロン派なんですが、一回目のアイロンの後は指の上に持ったまま冷めるのを待つんですよ。この段階では40~50度くらいなので、手で触れるくらいの温度なんですが、僕はこの「蒸す」ような工程が必要だと思っているんです。実は菊地さんのドライ工程がそれに相当するんじゃないかと。
つまり髪の形状が移動する時間というか、髪が「ガラス化」するまでには少しタイムラグがあって、移動しきっていないのに固めてしまうと、クセが残りやすいんですよ。なので、僕は蒸しているこの時間がクリープタイムで、移動に必要な工程だと考えてるんですよね。
岸口 ああ、確かに。そう思います。
YOSHI クリープ時間から冷やすまでの一連のトータル技術で、矯正って完成させるのかな、と思ってます。
菊地 そうですね。僕もブローとアイロンの2段階で「ずらす」という感覚です。まずブローでずらして、アイロンで「ずらし切る」イメージ。
YOSHI 最初の「火入れ」でずらし切っちゃうと、絶対上手くいかないものね。
菊地 うん、うん。
YOSHIたぶん、髪が真っすぐな状態に移動する時間と、真っすぐな状態で固まる時間には、少しタイムラグが生じるんだと思います。そのタイムラグがあることを分かっている技術者と分かっていない技術者で、ストレートの精度が大きく変わるんじゃないかな。
アイロンを入れていて、輝くような髪になる瞬間ってあるじゃないですか? それが一番きれいなストレートが出来上がっている瞬間。ところがそれ以上アイロンを入れると、ただ扁平につぶれるというか、きれいなツヤでなくなっていく。この光輝く瞬間がどのタイミングでできるのか、掴めている人は矯正が上手い人だなと思います。
――読者の皆さん、今回の3人のお話はいかがでしたでしょうか? 3人が競演する『SHINBIYOリアル矯正セミナー』を実現させて欲しい! という皆様のお声をお待ちしております!(たくさん集まったら、本当に実現してもらえるかも…) ご質問等もぜひこちらにどうぞ!
post1@shinbiyo.com
『SHINBIYO』5月号特集はコチラ→ coming soon!
※菊地さんが編み出したA~Fまでの6パターンの矯正技法と、13種類の還元コントロールレシピに関しては、弊社刊『経営とサイエンス』2022年6月号で詳しく紹介しています。