原料開発からこだわるものづくりの裏側
時代のニーズに合った製品やオリジナリティある製品を生み出す現場の裏側を取り上げるこの企画。
第5回目は株式会社リトル・サイエンティストの本社&ラボを訪問。ケアにこだわる美容師の研究心に火をつけるマニアックなラインナップの原点をお聞きしました。
ジブリの世界に足を踏み入れたかのような温かみのある外観は、訪れる美容師や関係者、商品テストに協力する一般の方々からも人気。こちらには本社機能と共に、テストルームや研究開発スペースがある。
2002年の創業以来、得意のケラチン研究を軸に100以上の商品を開発
人気の『リケラエマルジョン』や、目的別に細分化された通好みの処理剤『ワクワクneo』を始めとした、100点程あるラインナップが特徴的な、株式会社リトル・サイエンティスト。『ヘアマゼラン』『トイトイトーイ』など、ユニークな商品名を一度は耳にした方もいるだろう。
同社の商品は、髪のダメージを補修したり、髪をダメージから守る力の高い「ダメージレスケア」シリーズ、理想の髪を目指し、骨格からデザインする「ドレッシーケア」シリーズ。そして日々の生活を豊かにすることをコンセプトにした店販中心の「ライフケア」シリーズと、大きく3つの柱で構成されているが、そのほとんどがヘアケアを軸とした商品だ。今回はそうしたラインナップの背景やものづくりの裏側に迫るため、愛知県一宮市にある本社を訪れた。
まず私達を出迎えてくれたのが、一見して企業の社屋とは思えない温かい雰囲気の建物。一部吹き抜け部分があったりと、明るくアットホームな雰囲気が特徴的で、美容師や、商品テストに協力する一般の方々などからも好評だという。
中庭があり、明るい雰囲気の本社。
今回こちらの社屋にて、同社製造部ディレクター 基礎研究課マネージャー坪井孝幸さんと同 製造部 基礎研究課の櫻井聖華さんにお話をお聞きした。
同社は工学博士でもある野村恭稔代表取締役が創設した会社。野村代表は前職でウールの研究に注力し、高分子ケラチン「プロティキュート」の開発に成功。2002年に同社を設立し、そこからは得意のケラチン研究を軸に様々なヘアケア商品を開発していった。
2017年には髪の強度補強機能を持つ新規原料「アミノエチルジスルフィドケラチン」の開発に成功。この高分子架橋誘導ケラチンを採用した『リケラエマルジョン』は大ヒット商品となった。
元々同社は研究者が立ち上げたメーカーということもあり、今この世の中にあるものの後を追ったり、形を変えたりするより、一から自分達でつくり上げようという社風があるそうだ。また、原料開発から着手できる人材がいる強みを活かし、製造部の中に基礎研究課という原料開発を担当する部門をつくっている。
「社員は野村から『常識に捕らわれない』『ないものはつくる』という姿勢を学んできました。時には、バイオミメティクス※の考え方を取り入れたりと、製品開発のアイデアを生物から得ることもあります」
と坪井さん。
ちなみに最近同社で注力しているのが、ヘアカラーの残留ジアミンにアプローチする後処理剤の開発。
「植物のエキスが持つ力を活用して、ヘアカラー後に素早く残留ジアミンを無毒化するという、これまでにないアプローチの商品を考えています。140近い植物エキスのスクリーニングを行い、ようやく最適なかけ合わせを導き出すことができ、特許出願しています」
と櫻井さん。こちらは残留ジアミンによるかぶれやかゆみに悩む方々に向けた新商品として、来年の発売を目指しているそうだ。
同社の大きな特徴はこうした原料開発からこだわるものづくりだが、もう1つエキスパートの育成にも力を注いでいるのも特徴的だ。
細分化された商品を正しく使いこなすための学びの場が「リトル大学院」
「弊社では目的別に細分化された商品が多いからこそ、商品を使いこなす技術と、幅広い商品群の中からお客様に最適なものを選ぶ目を養っていただきたいということで、『リトル大学院』という学習の場を設けています。こちらでは、ヘアケアに関する情報を動画で学んだり、セミナーを直接受講したり、さらに学習の成果をLSマイスター制度などの認定試験で形に残すこともできます」
と坪井さん。
こうした学びの場を通して受講者同士が情報交換を行っているそうで、それが同社の商品の使いこなし力を高めることにつながっているのだそう。
多様化するケアのニーズに対応しつつ、予想の上を行く驚きのある商品づくりを目指す
最後に今後の展開について坪井さんにお聞きした。
「弊社ではリトル・サイエンティストという社名の通り、子供のように『あらゆるものにワクワクした気持ちで目を向ける』ことを常に考えています。他にはないオリジナリティと存在感のある商品づくりができるメーカーとして、今後も美容師の皆さんに『あって良かった』という便利さと共に、予想の上を行く驚きのある商品をお届けしていきたいと思います」
※バイオミメティクス=例えばハスの葉の表面が水をはじく仕組みや、鳥や虫が飛ぶ方法など、自然界にあるものの仕組みやデザインを手本にして、新しい技術や製品を生み出すという考え方。
テストルームは、モデルによるサンプルテストなどに使用。
社内には歴代商品を展示したスペースがあり、若い社員にもこれまでの歩みが分かるようになっている。
日々新しいものが生み出される研究室。こちらで原料開発から取り組む社員もおり、オリジナリティのある商品づくりを可能にしている。
取材協力:株式会社リトル・サイエンティスト
*月刊『SHINBIYO』2024年12月号 連載「製品開発のヒミツ」vol.5より転載