長く売れている「ヒット製品」には、愛される理由があります。
このコーナーでは、そんな珠玉の逸品を取り上げ、ヒットのヒミツを大解剖。
ユーザーに愛される理由を様々な角度から探ります。
『 SOMARCA Lab. 』
カラージェリー(全11色/240g) ジェリーメディウム(1000g)
サロン現場で起きていた「塩基性カラー」の課題に着目
ブリーチオンカラーやハイトーンカラーブームの訪れと共に、一気に需要が高まった塩基性(&HC染料)カラー。これらのカラー剤を駆使することで、色鮮やかな様々なヘアカラー表現を楽しむことができるようになっていった。そんな中で、ホーユー株式会社 プロフェッショナルカンパニーが2023年2月に発売した『SOMARCA Lab.』のシリーズは、高明度カラーでクリエイティブなデザインを打ち出しているデザイナーを中心に、大きな支持を得ているカラー剤である。塩基性カラーとしては後発であるにもかかわらず、発色の鮮やかさと、独自の製法が生み出した機能性で高い認知度を持つ『SOMARCA Lab.』。このカラー剤の開発には、どのような背景があったのだろうか? 同社マーケティング室 商品企画2課の仲嶋友範さんにお話を伺った。
「後発だからこそ、まずはサロンの現場でどのように塩基性カラーが使われているか、どのような悩みや問題点が潜んでいるかなどをリサーチすることから始めました」と話す仲嶋さん。塩基性カラーというと、まずは色の鮮やかさや多彩さが語られることが多い。そこに対して同社は「色での勝負だけではない、何か」を模索したという。
クリームからジェリー基剤へ。発想の転換で、機能性が大幅に向上
まず着目したのは「ベースが“クリーム基剤”であることの塗布のしづらさ、視認性の悪さ」である。
「これを解決するために『SOMARCA Lab.』では独自開発のジェリー基剤を用いた『アクティブジェリー処方』を採用しています。クリーム基剤の場合は、塗布過程で残留する白っぽいクリームが、均一な塗布や色みの確認を妨げる原因になっていました。しかしベース基剤がクリーム状から透明なジェリー状に替わることで、視認性の良さはもちろん、毛髪への食いつきや伸びの良さが格段に向上したのです」
塩基性カラーの塗布の基本は、髪にたっぷりと均一に剤を馴染ませること。クリーム基剤では技術を要したが、ジェリー基剤に替えることで一気に容易になったのである。またジェリー基材は、高い染着性を持ちながら、頭皮に着色しづらいというメリットもあった。
リカラー時の「読みづらさ」を解決する染料配合とマニュアル化
さらにもう一つ、同社が着目した点がある。それが「塩基性カラーが持つ“残留色素の読みづらさ”」だ。
「塩基性染料は個体差が大きく、同じピンク系でもアルカリでたやすく落ちる色もあれば、ブリーチしてもなかなか落ちない色もあります。また脱染剤で青系から赤系に変色したり、褪色過程で思いがけない色に変化することも。これはリカラーする時の大きな課題でした」
そこで第1弾の発売では、褪色や脱染時も考慮の上で厳選した塩基性染料のみを使用(現在はHC染料配合アイテムも有)。リカラー性と残留に配慮した処方で、染着から褪色まで安定した色みの維持を可能にした。
「同時に、使用マニュアルを再考しました。全色、アルカリでの脱染のしやすさ、しにくさ、褪色傾向、脱染傾向、各色の混合比による発色の違いなどを調べて、そのデータをパンフレットに掲載したんです。これもサロンリサーチを行っている過程で、美容師の方々が薬剤ごとに毛束実験を行い、データ化している姿にヒントをいただきました。であればメーカーとして、最初からその部分まできちんと提示しようと考えたんです」
これにより、例えば「このお客様は毎回大幅な色チェンジをリクエストされるから、なるべく落ちやすい色で表現しよう」といった操作ができるようになるという。
ブリーチ毛を想定した「Z-ボンディング成分」も配合
またダメージ毛のキューティクル層に作用し、毛髪強度の向上に導く「Z-ボンディング成分※」を配合していることも特徴だ。主体となるグルコン酸亜鉛には毛髪の引っ張り強度を高める作用があるため、よりハイトーン施術に適したカラー剤となった。
これらの独自性により「クリエイティブを得意とするサロンとヘアデザイナー」から、現在のような高い評価を得ることとなった『SOMARCA Lab.』。しかし仲嶋さんは「塩基性カラーは究極のケアカラーでもあります。クリエイティブだけでなく通常のサロンカラーとしても、ぜひもっと活用していただきたいのです」と語る。確かに、この着色や機能性は、作品づくりやミックス用の強調色として使うだけではもったいない。詳細なデータの提示で色の計算もしやすくなっている点も含め、美容師の創造力、提案力を大いに刺激するカラーといえるのではないだろうか。
>>>まとめ
POINT 01
独自開発のジェリー基剤採用で操作性が大幅に向上
POINT 02
塩基性カラーの褪色、リカラー時の不安定さに対応
POINT 03
全色のカラーデータ提示により、コントロールがしやすい
※グルコン酸亜鉛(毛髪補修成分)
取材協力:ホーユー株式会社 プロフェッショナルカンパニー