『in chelsea』15周年記念ヘアショー 照屋寛倖さんインタビュー

11月3日(月)名古屋の千種小劇場にて、『in chelsea』が15周年記念ヘアショーを単独で開催。会場には、名古屋の美容師の方々を中心に、全国から200人を超える人々が集まり、『in chelsea』の世界観が詰まった幻想的で美しいステージに見入っていました。ここではヘアショーを終えた代表の照屋寛倖さんに、今回のヘアショーを行うことになった経緯や、ステージを通して伝えたかったことなどについてお聞きしました。

――先日はヘアショーお疲れ様でした。今回、15周年ヘアショーを開催しようと思ったきっかけから教えていただけますか。

照屋 昨年、『Nicole.』(代表 西村晃一さん)の25周年アニバーサリーヘアライブを大阪まで見に行ったんですが、素晴らしくてとても感動して。それで、自分達も単独でヘアショーをやりたいと思ったんです。ちょうど今年15周年でしたし、今の自分の業界での立ち位置とか、サロンの状況とか、スタッフの成長具合を見て、やるなら今しかない、最初で最後のつもりでやってみようと思ったんですよ。

――準備はどのくらい前から始めたんですか?

照屋 確か『Nicole.』さんのヘアライブが5月で、その直後からだから、1年半前くらいからですかね。ヘアショーの内容は全然決めてなかったんですけど、センターステージ(360度客席に囲まれた舞台)でやりたいなと漠然と思ってて。名古屋市内で探したところ、今回の小劇場を見つけました。その時点で予約を入れられるのが、翌年の11月だったので、ヘアショーの開催が11月に決まったという感じです。

――テーマ「棘(とげ)」にはどんな意味が込められているんですか?

照屋 インパクトのあるテーマにしたくて、漢字一文字がいいかなと。尖ってやりたいという気持ちもあったし、花が咲いて散る、そんなストーリーの中で、心がちくっとするような美しさ、儚さを表現したいとの思いもありました。

エントランスには、テーマ「棘」とイラストが描かれたパネルと植物を設置。かなりのインパクトだった。

――インパクトと言えば、オープニングでスタッフのMoMoさんが自分の髪を切って、倒れるという演出も衝撃的でした。

照屋 ヘアショーの半年くらい前に思いついて、MoMoに話をしたら、「面白いですね」と言ってくれて。女の子が、自分で自分の髪を切るって、なんかぞわっとしますよね。そこから、映像が流れて、僕がカットしてというところまでがオープニングです。僕は最初と最後、ステージに出たんですが、最初から僕がいきなりステージに立つというのもサプライスとして考えました。

オープニングはMoMoさんのセルフカットからスタート。衝撃的な内容に会場もびっくり。

その後、照屋さんのステージ。テーマは「未完成な花」。アシンメトリーなカットスタイルで、上手く咲けずに散っていった花を表現。

――ショーの中で、照屋さんが出るステージ、スタッフが出るステージと、いくつかのステージに分けれていましたが、準備はどのように進めていったんですか?

照屋 スタイリストはカット、アシスタントはアレンジで、全員が出演すると決めて、その中でいくつかチームを分けて準備を進めていきました。チームができてからは、僕はあまり関わっていないんですよ。それぞれのチームで、ステージの構成から音楽、衣装、背景に流す映像まで全部決めています。

――ステージ全体で世界観が統一されていて、各ステージのテーマにしても「未完成な花」「朽ちと再生」「永遠の浸食」など一貫性があったので、照屋さんのディレクションがかなり入っているのかと思いました

照屋 全然違うんですよ。月に1~2回全体でミーティングをしたのと、チームごとに準備して、ある程度できたところで僕のチェックは受けてもらっていましたが、各ステージの内容についてはほぼスタッフが考えました。ヘアショーを見てくださった方々から「『in chelsea』の世界観がすごく伝わってきた」とおっしゃっていただいたのですが、スタッフみんなが『in chelsea』の色を考えてくれた結果だと思います。

1stステージは、若手スタイリストによるカットのステージ。テーマは「朽ちと再生」。レザーで大胆にカットしていく姿に、新しい世代のパワーを感じた。

2ndステージは、アシスタントステージ。テーマは「永遠の浸食」。カラフルなエクステ、ウィッグなどを使用し、デコラティブにヘアをアレンジ。衣装も手づくりした。

3rdステージ。スタイリストの清原 脩さんとyolicoさんによるカットのステージ。テーマは「刹那」。カットをしている時の黒い世界と、クロスを取った後の、白とピンクの衣装で光に包まれた美しいステージのコントラストが印象的だった。

4thステージ。MoMoさんのソロステージ。テーマは「水の精霊」。青い光の幻想的なステージで、MoMoさんが美しくカット。

――ラストステージはMoMoさんがピアノを弾く中で、照屋さんがカットし、最後には花びらのような紙吹雪が舞うという美しい演出でした。

照屋 ピアノは僕の無茶ぶりです。会場を見に来た時にピアノがあるのを見て、ピアノの音と、シザーの音だけが響くようなステージがあってもいいかなと、思いついたんです。それで、以前、MoMoがピアノを習っていたという話を聞いたことがあったので、お願いしました。ピアノを弾くのは10年ぶりくらいだったそうなのですが、自分がカットするステージの準備を進めつつ、サロンに電子ピアノを持ち込んで、ピアノの練習もしてくれていました。今回、MoMoが一番大変だったと思います。

ラストステージ。MoMoさんのピアノの美しい旋律の中で、照屋さんがモデルをカット。テーマは「棘の中で散りゆく花」。

紙吹雪が舞い散る中、モデルは黒い衣装を脱ぎ、鮮やかな赤いドレス姿に。

――15周年記念のヘアショーやパーティーというと、ハートフルなメッセージを紹介するというイメージもあるんですが、世界観を見せることに徹したヘアショーでしたよね

照屋 お客様のビデオメッセージを流す案などもあったのですが、見に来ていただくのは美容師の方々がほとんどだと思ったし、言葉で語るよりステージで見せたほうが潔くていいんじゃないかと。僕達はデザインとか、世界観で伝える集団でありたいとの思いもありました。言葉によるメッセージをなくした分だけ、どのステージも、ヘアはもちろん、衣装、音楽、光、スクリーンに流す映像などビジュアル的な要素にはかなりこだわってつくりました。

――今回のヘアショーで、大変だったのはどんなことでしょうか。

照屋 最初は集客からステージの構成まで、全部自分達でやっていたのですが、みんな出演するので、ステージを客観的に見られる人がいない。そして、進行を管理できる人がいないということに気づき、途中からステージの演出・進行に関しては外部のイベント会社にお願いしました。金銭的なことで言えば、最初は予算をなるべく削りたい、持ち出しを少なくしたいと思っていたんです。でも、そのマインドでやっていたら、いいものはつくれないと思い、予算を投入しました。自分達の世界観を伝えたいとの思いから、今回、写真集もつくり、ヘアショーにいらしてくださった皆さんにお渡ししました。

今回のヘアショーで写真集も制作。来場した一人に1冊、配られた。

――ヘアショーを終えて、照屋さんを始め、スタッフの皆さんに変化はありましたか?

照屋 ヘアショー前の1週間は、皆ほぼ徹夜で準備に追われていたので、終わった後はしばらく抜け殻状態でした(笑)。今回、皆でヘアショーをできたことは、スタッフ一人ひとりにとって、大きな自信になったと思います。これが最初で最後の単独のヘアショーと思っていたけど、終わった後の充実感とか、スタッフが成長した姿を見て、20周年でもまた何かやろうかなと思ったりしています。それからこの前、ヘアショーを見に来てくれた20代の美容師さんが「ステージを見て感動して、泣きました」と言ってくれて、すごくうれしかったんですよ。よくクリエイティブをやる若い世代が減っていると言われていますが、僕の周りでは増えている印象なんです。今回のヘアショーでいただいた反響からもそれを感じました。だからこそ、これからも僕自身、そして『in chelsea』としても、ヘアショーや撮影など様々な形で、さらにクリエイティブシーンを盛り上げていきたいと思っています。

 

 

 

照屋寛倖 /in chelsea

てるや・ひろゆき 1976年生まれ。愛知県出身。名古屋綜合美容専門学校卒業後、名古屋市内2店舗を経て、2010年、愛知県北名古屋市に『in chelsea』をオープン。現在、2店舗を展開。2022年、「JHA」グランプリを受賞。フォトグラファーとしても活動しており、自身がヘア&撮影を行うセミナーも人気。Instagram/inchelsea_teruya