「HANGOUT」トークセッションREPORT【前編】

『utuwa』黒須光雄氏と『Ii』高木貴雄氏が、2024年に始動したクリエイティブイベント「HANGOUT」。今年の活動の第一弾として、2月16日(月)に東京・高円寺の『loca』にてトークセッションが開催されました。豪華ゲストがスピーカーとなり、来場者も話題に加わりながら大いに盛り上がった同イベント。この記事では、どんなトークが繰り広げられたのか2回に渡ってレポートします!

これまでの「HANGOUT」では、黒須氏と高木氏が時にゲストデザイナーを迎えながら、フォトグラファーと共に撮影に取り組む様子を公開。作品撮りやコンテストを含むクリエイション活動に臨む彼らの考え方や姿勢を示しながら、HANG OUT=“遊び場、たまり場”的に同じ志の仲間の輪を広げていくことを目指して開催されてきました。

今回は、ベテランはもちろんのこと若い世代ももっと巻き込むべく、これまでよりカジュアルに参加しやすい形として飲食を交えたトークをメインにした展開に。当日は、美容学生から美容師歴20年以上のオーナークラスまで、幅広い世代の参加者が集まりました。

『HANGOUT』を主宰する高木さん(左)と黒須さん(右)

トークセッションの演目としては

【勢いのある20代デザイナー編】

昨年大きなコンテストでグランプリを獲得した気鋭の20代を代表して、『DaB』HARUTO氏(THA2025グランプリ)、『N』咲音氏(TRENDVISION 2025 CREATIVE部門GOLD AWARD)、『LECO』工藤 舞氏(2024 DA-PRO ミディアム~ロング部門グランプリ、CYL 2024&2025グランプリ)の3名が登壇。こちらは『LECO』の内田聡一郎氏がナビゲーターを務めました。

 

【JHA大賞部門グランプリ受賞デザイナー編】

JHAにて過去にJAPAN HAIRDRESSER OF THE YEAR大賞部門のグランプリ受賞歴があるデザイナーの中から、2025年グランプリの『kakimoto arms』小林知弘氏、2022年グランプリの『in chelsea』照屋寛倖氏、2020年グランプリの『LECO』内田聡一郎氏の3名が登壇。こちらは小誌編集長の工藤 亮がナビゲーターを務めました。

各デザイナーがヘアデザインをつくることとどう向き合っているのか、どんな想いでコンテストや作品づくりに挑戦しているのか、経験者だからこそ語れるエピソードと共にリアルかつ熱い話題が飛び交いました。

 

前編では、【勢いのある20代デザイナー編】のトークセッションをご紹介します。

左から内田さん、HARUTOさん、咲音さん、工藤 舞さん

内田 まず皆さんがコンテストに挑戦するようになったきっかけについて教えてください。

 

HARUTO 僕は元々、人前に出ることとか目立つことが好きなんですけど、『DaB』に入社して半年で出たコンテストで最年少優勝したんです。その壇上に立った時の感覚というか快感が忘れられなくて。けど、それ以降に出場したコンテストではどれも受賞できず、結構どん底に落ちました。その悔しさが根源ですね。で、2023年にTHA(TOKYO HAIRDRESSING AWARD)に出て準グランプリを獲ったものの、やっぱりどうしても優勝したくて。

 

工藤(SHINBIYO) THAでは決勝に向けての準備に集中するあまり、体重が7キロくらい落ちたと聞きましたが…。

 

HARUTO もう優勝することしか考えてなくて、1年間そのために練習しまくって、ウイッグ代もトータル40万円くらいかけました。ご飯も食べられなくなって、体重が50キロを切るところまでやり込みました(笑)。そこまで執着して集中できたのは、本当に環境のおかげなんですけど、結果的に2024年のTHAで優勝できて。やったからこそ感じるのは、コンテストってめちゃくちゃ上手くなると思いますし、僕はその経験を経て美容師としてのフェーズが変わったなと思っています。

 

咲音 私は美容学生の時は全然クリエイションとかに興味がなかったんですけど、郷に入っては郷に従えで、『N』に入社してからオーナー(成田堅太朗氏、小島翔太氏)の撮影に関わるようになりました。ヘルプに入った小島の作品がJHAで受賞した時に、これが美容師の究極系なんだと感動して。日々の営業でも、クリエイションをやっているからこそ、似合わせとかデザイン力をサロンワークに落とし込めるというのを目の当たりにして、知れば知るほど面白くなったのがきっかけで、自分でもチャレンジするようになりました。

 

工藤 私は学生の頃からコンテストに出てはいたんですけど、入社後はコロナもあってあまり挑戦する機会がなくて…。『LECO』では撮影やヘアショーなど色んな現場につかせてもらって、それは楽しかった半面、自分のようなアシスタントにはまだ無理だろうってブレーキをかけていたところもありました。そんな中、2年目に同期があるコンテストで準グランプリを獲ったんです。それに感化されたし、悔しい気持ちもあって自分もやってみようと。そして、美容師として初めて出たコンテストで準優勝したんです。先輩に見てもらいながら決勝に向けてひたすら練習する中ですごく成長を実感できて、そこから「次は優勝を目指そう」と色々な立ちコンに挑戦するようになった感じです。

 

内田 コンテストに出たほうがいいのは分かる。でも実際は出ている人のほうが少ないのが現状で、かと言ってその出てない人たちがサロンワークで輝けていないわけではないと思うんです。積極的にやっている側として、その辺はどう捉えていますか?

 

工藤 興味があっても壁が高く感じて踏み出せないっていうのは、自分もそうだったから分かります。でも一歩踏み出して経験してみたら、賞が獲れなくてもまた挑戦しようってなると思うんです。少しでも興味があるなら、まずは踏み出す勇気が大切かなと。

 

咲音 これは成田の言葉なんですけど、“どの山を登るのか”なんだと思います。コンテスターの山なのか、SNSでバズる山なのか、地域密着のサロンワークの山なのか。私はそれがたまたまコンテスターの山でした。美容師として何に時間を割いて、どこで努力を表に出すかの違いなだけと言いますか。コンテストは頑張っている姿勢を見せられる場。美容師を続けていく中で、自分がやりたいことを突き詰めないといつか“嫌”が来ると思うので、やらされるのではなくてちゃんと自分で決めたことをやるのが大事なのかなと思います。

 

HARUTO 『DaB』ではコンテストに出場する若手も増えていて、それは僕が後輩にそういう姿を見せてきたからという自負はあります。でも、本質はサロンワークだと思っていますし、僕もコンテスターになりたいわけではない。ただ、コンテストからはサロンワークだけでは出てこない“もう一歩先のデザイン”みたいなものが生まれると感じていて。八木岡(八木岡 聡氏『DaB』代表)はよく、お客さん1人に対してデザインが6パターンは浮かばないとダメと言いますが、そういう力が養われるメリットはあるんじゃないかなと。

 

工藤 例えば、『LECO』にもアレンジを頑張る子、SNSを頑張る子色々いて、目標を持つことの姿勢に差はないと思います。でもコンテストは、若いうちに1回でも挑戦してみて欲しい。なぜなら自分がやってみて、技術とかデザインの引き出しが増えた実感があるので。

 

HARUTO 確かに、練習する分上手くなるっていうのはあると思います。それがサロンワークに正しく繋がるかはその人次第なところもありますけど。僕はコンテストも勝って、サロンワークでも活躍するオールラウンダーになりたい。

 

咲音 サロンワーク=技術と捉えると違うのかもしれないですけど、サロンワーク=お客さんを喜ばせることであるとするなら、例えば私が優勝したことを伝えると泣いて喜んでくださるお客さんがいたり、「そんなすごい人に切ってもらってるんだ」って感じていただけることもあります。そういうプラス面もあるのかなと。

 

内田 なるほど。じゃあ逆に、デメリットみたいなことは?

 

HARUTO えーと、人にたくさん迷惑をかけました。

 

一同 爆笑

 

HARUTO 営業はもちろんちゃんとやりますけど、その時期は後輩の指導とかは正直おろそかになってしまったので…。ある種免除してもらっていたというか。それにお金もなくなりますし。

高木 コンテストで結果が出ても、一般のお客さんへの認知や集客にはつながりにくいですか?

 

HARUTO 新規は来ないですよね。でも優勝したら自信がつくじゃないですか。そうすると提案力は上がると思います。僕はサロンワークがめっちゃ変わりました。咲音さんが言ったように、プレゼントや花を持ってきてくださるお客さんがいたりとかもしますし、紹介も増えたりとか。結果的には多少なりともつながるのではないかと。これは自己投資として長い目で見ないとですよね。

 

咲音 私はお金にもつながっていて。まだジュニアスタイリストのポジションですけど、ありがたいことにセミナーなど外部のお仕事をいただく機会は増えています。

 

黒須 コンテストで受賞という結果を出すために必要だと思うことは何ですか?

 

工藤 私はまずモデルさんから決めるんですけど、絶対に手を抜かないのはそのモデル選びです。自分がカットしたいモデルが見つかるまでギリギリまで探し続けます。

 

工藤(SHINBIYO) それは街でハントするんですか?

 

工藤 はい、そうです。インスタだとどうしても文字では伝わらないこともあるじゃないですか。直接のほうが自分の気持ちとか想いを乗せて伝えられると思うんです。「あなたじゃなきゃダメなんです!」みたいな。

 

内田 舞ちゃんのモデハン力はマジですごい。「どこで見つけたの?」っていうくらいプロモデルみたいな外国人連れてくるし。英語ができるわけじゃないのに、どうやってバッサリ切るの口説いてるんだろう。しかも最終的に仲良くなっちゃうし。

 

工藤 そこは“出川イングリッシュ”で乗り切ります(笑)。

 

咲音 私もモデルさんは先に決めます。なので、ファイナルへの進出が決まった段階で、どんなデザインでいくかというのも割と早く決まって。決めたらひたすらそれをつくる練習をする感じですね。オーナーにアドバイスを求めることもありますけど、意外と全部は聞かないかも。

 

工藤 私は自信がなくて先輩に何でも相談しちゃうから、そういうのかっこいいなって思います。

 

HARUTO 僕は絶対相談しないです。自分が一番イケてると思ってるので(笑)。唯一意見を聞くとしたら千恵さん(山田千恵氏『DaB』クリエイティブディレクター)くらい。

 

黒須 ちょっとここで会場から質問があるようなのでいいですか?

 

いけのの すみません、九州から来た『Pluss teru biyousitsu.』のいけのの晃正です。コンテストは賞を獲っても、その後に特に何も起こらない場合があると感じています。HARUTOさんはTHAで優勝した時、それが最高なことだっていうのを結構大々的に発信していましたけど、それはコンテストの立ち位置を高めたいみたいなことを狙ってされたのですか?

 

HARUTO はい、それは狙っていました。コンテストの見られ方を変えたいと思っていたので。最初にお話しした20歳で優勝した時、何も起きなかったんですよ。アシスタントでしたし。雑誌の依頼も来ないですし、社内からも忘れられる。賞を獲った後に仕事が増えないと意味ないじゃないですか。なので、僕はその場にいた人も(インスタの)投稿を見てくれた人もすべてを虜にしようと思っていました。あそこで結果を残してコンテストの流れを変えたら、仕事も来るはずと思って。実際、翌年は色んなオファーをいただけて、見られ方が変わったのは感じましたね。

 

いけのの なるほど。そこまで声高に主張する人って、あまり見たことがなかったのですごいなと思いました。翌年のファイナルの時には投稿を下げられていたので、そこで切り替えているのかなっていうのも感じました。

 

HARUTO コンテストだけに執着したくないというのもあります。美容師として全部パーフェクトでいたい。賞獲っても売り上げが少ないとかは嫌ですし。どの角度も強くありたいからケミカルも勉強してきましたし。

 

高木 ちょっとすみません、そろそろタイムリミットです!

 

内田 白熱してますね。それぞれキャラが立っていて、しっかり自分の考えを持っていてすばらしい。ありがとうございました。では、後半戦もお楽しみに!

 

後編は、【JHA大賞部門グランプリ受賞デザイナー編】をお届けします。

 

≪PROFILE≫

HARUTO/1998年生まれ。日本美容専門学校卒業後『DaB』入社。現在は『DaB DAIKANYAMA』にて副店長を務める。@haruto_0210

工藤 舞/2000年生まれ。国際文化理容美容専門学校 渋谷校卒業後『LECO』入社。現在はスタイリストを務める。@leco_mai

咲音/2002年生まれ。渋谷美容専門学校(旧住田美容専門学校)卒業後『N』入社。現在はジュニアスタイリストを務める。@n_sakine0211