SHINBIYO6月号バチクリ対談 番外編 『SCREEN』橋本佳奈×『JURK』朝日美月祈が語る、コンテストのリアル(前編)

 

結果だけじゃない、その先のために。

SHINBIYO6月号特集「コンテスト覇者達のバチバチクリエイション」企画で行われた『SCREEN』橋本佳奈さんと『JURK』朝日美月祈さんの対談では、真摯にクリエイションと向き合うお2人の思いを語っていただきました。

対談取材は、見学に来ていた若手スタッフやSHINBIYOフォトグラファー酒井風太も加わり、座談会へと発展…。ここでは、その座談会の様子をご紹介します。

コンテストへの向き合い方、追い込み方、周囲との関係性、そして美容師としての人生観まで、本音で語ってもらいました。そして、話が進むほどに見えてきたのは、“一人では続けられない仕事”だからこそ生まれる、人とのつながりの強さでした。


『SCREEN』橋本佳奈さん


『JURK』朝日美月祈さん

「本気でやるから、美しい」という言葉

 ――本編の対談でも触れましたが、コンテストについてさらに伺っていきたいと思います。

フォトグラファー酒井風太(以下、酒井) 皆さんって、コンテストや撮影の準備で徹夜とか当たり前なところがありますよね。

橋本佳奈(以下、佳奈) 徹夜(苦笑)。最近は、していることをあまり言わないようにしてます(苦笑)。

酒井 でも実際は、泊まり込みで衣装をつくってたり、営業後もずっとやっていたりして。なんでそこまでできるんだろうって、ずっと思ってたんです。

――確かに、モチベーションが知りたいと思っていました。

酒井 本当に。この前も、衣装を全部手づくりしてる現場をたまたま見る機会があって。なんでここまでできるんだろうって思ってたんですけど、今日話を聞いていて、「人の人生を変える」とか、「誰かに影響を与える」とか、コンテストにかける覚悟や思いの強さを聞いたら、「そりゃそうなるよな」って、すごい点と点がつながった感じがしました。

佳奈 優勝するとか、それだけじゃないんですよね。

朝日美月祈(以下、美月祈) そう、結果だけはないですよね。私、神谷さん(『SCREEN』代表・神谷 翼氏)のステージのスクリーンに映し出された「本気でやるから、美しい」っていう言葉がめちゃくちゃ好きで。それを見たのが初コンテストに出場する時で、あの言葉を胸にコンテストに臨みました。

佳奈 昔、先輩とコンテストに向き合っている時に、愛言葉のようなお守りになる言葉が欲しいといいうことになって、たまたま見かけたこの言葉がピッタリだったんです。

美月祈 その場で写真に撮りました(笑)。

佳奈 本当に? うれしい(笑)。


左手前から、『SCREEN』杉山 郁さん、鈴木誌乃さん、『JURK』凛芭さん、宮田大暉さん。

「やらない後悔より、やる後悔」

――ここからは、見学に来てくださった若手スタッフの皆さんも参加しましょう。この機会に、お二人に聞いてみたいこととかありますか?

JURK凛芭 お二人って、コンテストの準備をしていて、「何のためにやってるんだろう?」とかって悩んだりした時に思い出す言葉とか、マインドみたいなものってありますか?

美月祈 私は、「やらない後悔より、やる後悔」かもしれないです。

一同 ああー。

美月祈 結構、後輩にも伝えてるんですけど、コンテストの準備期間って、「これやり過ぎかな」とか、「これ引き過ぎかな」とか、「今日ちょっとしんどいから休もうかな」とか、色々と甘えそうになる瞬間ってあるじゃないですか。

佳奈 ありますね。

美月祈 でも私、1分1秒でも妥協したら、負けた時に「あれが原因だった」って思っちゃうタイプなんですよ。ちょっと苦しめる系の美容師なんで(笑)。

一同 笑

美月祈 だから、直前はめちゃくちゃ自分を追い込みます。「ここまでやったから、結果が出なくても全力出したって思える」ぐらいまでやりたい。

佳奈 すごい…。

美月祈 だから、自分を出すか、審査員に寄せるか迷った時も、「どっちなら後悔しないかな」で選びます。「これを選んだからには、後悔してもいいや」って思える選択をする。

――後悔したことってあるんですか?

美月祈 美容ではあんまりないかもです。恋愛はあります(笑)。

一同 笑

美月祈 「あの時会わなきゃよかった」とか(笑)。でもコンテストは、「あの時はあれが正解だと思った」って言える選択をしてきた感覚があります。

――佳奈さんはどうですか?

佳奈 美月祈さんと同じ気持ちは120%あるというのが前提なんですけど、私は逆に、「やめてもいい」って思ってます。

美月祈 えっ、意外です。

佳奈 本当に嫌だったらやめればいいし、放り出したっていいと思ってるんです。私がやめたところで地球は終わらないし。

一同 笑

佳奈 周りは最初困るかもしれないけど、でも絶対、また誰かが挑戦する。そう思うと、ちょっとラクになる。自分のお守りみたいに、唱えるんです。

美月祈 究極ですね。でも、絶対やめないですよね(笑)。

佳奈 そうなんですよ。自分がやめないことを、自分が一番分かってるから。だから、自分の心を保つために「やめればいい」って思ってる。

酒井 天使と悪魔みたい。

佳奈 そうです。常に2人がいて、ずっと頭の中で戦ってます(笑)。

美月祈 分かります。私も頭の中で「やれ」って、自分で洗脳してます。

佳奈 自分のために時間を使ってくれてる人がいるじゃないですか。応援してくれてる人とか。そういう人たちのことを思うと、やっぱり悪魔側の選択はしないんですよね。

美月祈 周りの人があってこそですね。

佳奈 本当にそう。一人だったら、多分挑戦できない。


SHINBIYO6月号バチクリの橋本さんの撮影風景

「巻き込む」ことも、一つのスキル

――お二人とも、周りを巻き込むのがすごく上手な印象があるんですけど、それって最初からできてたんですか?

佳奈 いや、全然でした。むしろ真逆。

美月祈 そうなんですか?

佳奈 私、昔めちゃくちゃ完璧主義で、弱いところを絶対見せたくなかったんですよ。できないことも見せたくなかったし、一人で全部やろうとしてた。

酒井 意外です。

佳奈 私の転機は、神戸から銀座に来たことだったと思います。銀座に来て、若くして店長をやらせてもらって、お店を引っ張っていかなければいけないとなった時に、「これは弱いことを伝えないと助けてもらえない」って思ったんです。

美月祈 そうなんですね。

佳奈 それで、スタッフの前で泣きながら、「一人じゃどうにもならないから助けて欲しい」ってお願いしたことがあって。

美月祈 それ大きいですね…。

佳奈 多分、それが全部の始まりだった気がします。そこから、「できないことも人間らしくていいか」って思えるようになった。

美月祈 巻き込むことも頼ることも、一つのスキルですよね。

佳奈 本当にそう。

美月祈 私も、オーナー(『JURK』代表・沢井卓也氏)にずっと「巻き込め」って言われてきました。

――最初は苦手だったんですか?

美月祈 めちゃくちゃ苦手でした。結構、一人で進めちゃうタイプだったんです。でも、コンテストを後輩の凛芭と一緒につくるようになって変わりました。

――どういう感じに変わりましたか?

美月祈 衣装のここお願いね、とか、メイク考えて欲しいとか、一緒に考えてもらうんです。そうすると、結果が出た時に勝っても負けても、私以上に泣いてくれるんですよ。

佳奈 分かる。思いの強さが伝わってきます(笑)。

美月祈 “一緒につくった”っていう感覚があるからだと思います。今年は、その子達が今度は主役側になって挑戦してたりして、成長を見てると「巻き込んで良かったな」って思います。

――巻き込んだり、頼ったりするのは最初は怖かったですか?

美月祈 最初は、頼るのが怖かったです。私、男兄弟に挟まれた真ん中で、親にもあんまり頼らずに育ってきたので。「自立してるね」って言われることが多かったんですけど、逆に言うと、一人で抱え込んじゃうタイプだった。

佳奈 なるほど。

美月祈 でもオーナーが、それをすごい見抜いてて。「そういうバイタリティがあるなら、人を巻き込んでいきなよ」ってずっと言ってくれてたんです。

佳奈 環境も大きいですよね。

美月祈 すごい大きいです。巻き込むって、自分だけ頑張ればいい話じゃなくて、任せた相手ができなかった時も、自分の責任になるじゃないですか。そこをフォローできなかった時とか、結構落ち込んだりもしてました。

佳奈 うんうん。

美月祈 でも今は、後輩達も理解してくれるようになってきて、巻き込むことが苦じゃなくなりました。


今回の朝日さんの撮影にも、凛芭さんは参加してくれた。

【前編】はここまで。

コンテストへの向き合い方も、努力の仕方も、原動力も、それぞれ違うお2人。それでも、佳奈さんと美月祈さんの言葉に共通していたのは、「人とのつながり」が自分を前に進ませているということです。一人で頑張るのではなく、巻き込み、支え合い、刺激を受けながら成長していく。その積み重ねこそが、コンテストという舞台の先につながっているのかもしれません。

【後編】に続きます。

本誌6月号の対談では、デザインや画づくりのプロセス、モデルさんとのコミュニケーションづくりなど、クリエイションについて語っていただいています。クリエイションやコンテストに取り組む上でのヒントが必ず見つかります。ぜひ、ご覧ください!

6月号はこちらから

https://www.shinbiyo.com/shinbiyo-2026%E5%B9%B46%E6%9C%88%E5%8F%B7/

 

 

橋本佳奈 はしもと・かな 1995年生まれ、滋賀県出身。関西美容専門学校卒業後、神戸の『SCREEN』に入社。現在、『SCREEN GINZA MAISON.』の店長。神戸と東京、2拠点でサロンワークを行いながらクリエイションにも注力する。2022年、「トレンドビジョン クリエイティブビジョンアワード」でゴールドプライズ受賞。2025年には「JHA」で準グランプリを受賞する。@screen_kana

 

朝日美月祈 あさひ・みつき 1998年生まれ、茨城県出身。日本美容専門学校卒業後、2019年に名古屋の『JURK』に入社し、2022年の東京出店に参加。「ウエラ トレンドビジョン リアルスタイルアワード」で2023年、2025年にゴールド、2024年にシルバープライズを受賞。「ロレアル カラートロフィー」では2024年にシルバープライズ受賞。今年7月より渡英し、日英2拠点で活動予定。@mitsuki_jurk

 

凛芭 『JURK』入社3年目のカラーリスト。「ナプラ ドリームプラス2026」東京エリアファイナル入賞。

宮田大暉 『JURK』1年目アシスタント。

杉山 郁 『SCREEN』2年目アシスタント。

鈴木詩乃 『SCREEN』2年目アシスタント。