新研究所「COTA KYOTO Lab」訪問
時代のニーズに合った製品やオリジナリティのある製品を生み出す現場の裏側を取り上げるこの企画。
第1回目は2022年6月に新設移転された、コタ株式会社の研究開発専用施設「COTA KYOTO Lab」(コタ キョウト ラボ)をSHINBIYO編集部が訪問。
施設の特長について研究部を代表して髙瀬修一氏にお聞きしました。
基礎研究の専用スペースや小スケールの試作品づくりが容易にできる場
最近では長年の基礎研究を製品開発に活かした薬用育毛美容液『コタエイジング グロウセラム』(以下、グロウセラム)を生み出すなど、多くのヒット製品やロングセラー製品を生み出してきたコタ株式会社。その研究開発専用施設「COTA KYOTO Lab」が、京都府久世郡の本社から程近い場所に新設された。
今回はその新施設の特長について、研究部を代表して髙瀬氏にお聞きした。
「この『COTA KYOTO Lab』は昨今の研究部員増加に伴い、実験室が手狭になったこと、また近年は基礎研究にも力を入れており、そうした研究に必要な環境の整備を目的に新設しました。現在、開発や品質管理、薬事・知財関係などの研究部所属の社員が40名程勤務しています」
「COTA KYOTO Lab」で研究開発力を高めるために力を入れた点のひとつが、細胞培養室(クリーンルーム)の設置だ。化粧品にとって安全性は重要な項目のひとつであり、皮膚細胞モデルによる安全性試験を実施できる細胞培養室(クリーンルーム)は今回の大きな目玉だと髙瀬氏は話す。
「こちらでは育毛に関連する毛乳頭細胞の培養などもでき、育毛関連の基礎研究も可能な設備となっています」
コタ株式会社では長年、毛髪の基礎研究に力を入れている。冒頭で触れた『グロウセラム』は基礎研究からの製品化というこれまでにないプロセスを実現したが、独自性の高い製品づくりに基礎研究は欠かせないと考え、設置したという。
またその他にも試作室を充実させた。
「ビーカースケールと工場のタンクスケールでは仕込み量に違いがあり、結果としてクリームなどの滑らかさ・伸びが異なることがあります。そこでビーカーと工場タンクの中間にあたる20㎏の試作機を導入し、細かな製造条件を検討できるようにして、作業効率アップにつなげています」
多くの研究員が働く実験室は、外光を取り入れた明るい印象。壁の色にもこだわり、一般的な実験室のイメージとは全く違うところも特長のひとつ。
さらにモニタールームを拡充した。
「弊社ではひとつの製品を生み出す過程において、美容室でのモニタリングの前段階で、200人以上の一般モニターにご協力いただき、使用感などをリサーチします。モニタールームを拡充することで、より多くの方にご協力いただけるため、同時に多くの製品を手掛けることが可能になりました」
研究部の社員からも実験室が広くなり、作業がしやすくなったという声や、実験室内の見通しを良くしたことで機器の使用状況が一目で分かり、効率が良くなったという声も聞くそうだ。
また髙瀬氏がこだわったのが“対話の中から生まれる想像力を製品開発に活かせる空間”だそうだ。確かに「COTA KYOTO Lab」には、これまでの研究施設にはない開放的な空間が広がっている。
「大きな特長としては、『ブレストゾーン』と呼ぶミーティングスペースをスキップフロア(※)各所に設けたことです。アイデアが浮かんだ時、気軽にミーティングできる場所をつくることで、スピード感のある開発を目指しました。実際に、様々な研究員が開発チームの垣根を越えてミーティングする姿をよく見かけるため、今まで以上に各チームの連携が取りやすくなったのではと感じています」
施設内は木目を中心にしたインテリアと、外光を取り入れた明るい雰囲気で、「感性を刺激してこれまでにない製品開発につなげる」というコンセプトを体感しやすい環境になっている。
以前の施設よりモニタールームを広げて、ヘッドスパ対応のシャンプー台なども導入。1日8~10人程度のモニターに協力してもらえるようになったことで、新製品開発のスピードを高めることが可能になった。
オフィスフロア。研究員は勤務時間の多くを研究施設内で過ごすため、オフィスフロアは木目を基調にした明るいインテリアで社員同士のコミュニケーションを取りやすい環境を目指したという。
五感を刺激する空間やサスティナブルな空間で、柔軟な発想につなげる
また環境負荷低減にも力を入れており、太陽光発電で電力消費量を削減する他、井戸水を植栽用の散水に利用し、資源を有効活用している。その他にも多くの省エネルギーシステムを導入し、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)のAランクを取得しているそうだ。
こちらの「COTA KYOTO Lab」は、実験室をガラス張りにしているため、得意先美容室のオーナーやスタッフが見学できるようにしている。今後は開発の現場を知ってもらい、よりシンパシーを感じてもらうため、多くの交流の機会を設けたいと考えているそうだ。
最後に今後の展望などを髙瀬氏にお聞きした。
「弊社では『女性は髪からもっと美しくなれる』をコーポレートスローガンとしています。1人でも多くの女性が、髪からキレイになることを楽しんでいただけるような製品を開発することが弊社の使命。そのために、この最新の研究施設を最大限に活用し、高品質で安心・安全な製品開発を強化していこうと思っています」
(※)スキップフロア(フロアの高さを半階層分ずらして、各階の間に中二階などのエリアをつくる間取り)を採用。自由に意見を話し合えるミーティングスペースを「ブレストゾーン」(=ブレインストーミングゾーン)と呼び、異なる所属の社員が交流できる場をつくった。
敷地面積は1,160㎡、延べ床面積2,231㎡で4階建て。「『土・水・緑・風』あらゆる生命の輝きを感じるデザイン」をコンセプトに環境負荷低減にも力を入れており、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)のAランクを取得した。
取材協力:コタ株式会社
*月刊『SHINBIYO』2023年1月号 連載「製品開発のヒミツ」vol.1より転載