パーマやカラー、トリートメント、処理剤etc.……、
いろんなケミカルプロダクツのパフォーマンスを
夜な夜な検証している研究熱心な美容師さんを毎回、お一人、ご紹介する
「YONAYONA CHEMICAL」
その記念すべき第1回目のゲストは、こちらの方!
じゃーん!
兄@anino_boyakilabさんです!
兄(アニ)さんは、2020年春より、Instagram上で、自身の毛束検証を発信し始め、
これまでに投稿した本数は300本以上。現在、2万人のフォロワーを持つ、インフルエンサーの一人です。
「毛束の人」の愛称でもお馴染みですよね!
今回は、以前、検証していただいた時の模様を交えつつ、
兄さんが日々どんな感じで検証をしているかをチラっとお見せしたいと思います。
ちなみにその時の検証テーマは、
「アルカリカラーは同じ色味でもメーカーによって発色が違うのを見てみる!」。
って、長っ!
皆さん、セミナーとかで、よく、
「A社のバイオレットって、少し赤紫よりで、B社は青紫よりだよね」
みたいな話を聞いたことありませんか。
きっと一度くらいはあるのではと思います。
メーカーごとに色味の違いを把握していれば、自分好みのバイオレットはこれだ!って言うことができますよね。
兄さんは、そこから一歩進めて、メーカーごとの褪色状況まで検証しました。
ちなみに検証には、検証仲間の『アライフ』青木幸治さんと、『Allhair Crazy Beat』の寺本憲正さんが協力してくれました。
みんな、真剣そのもの!

『Allhair Crazy Beat』の寺本憲正さん
この時の検証用毛束は、撮影して記録するため、アイロンでキレイに伸ばしてくれました。

『アライフ』の青木幸治さん
検証では、バイオレットとブルーの2色を5社のメーカーごとに見てみました。
今回の『YONAYONA CHEMICAL』では、
その中からバイオレットの発色&褪色状況をご紹介します。
まずは、5社分のバイオレットの発色と褪色状況から。
ザーンッ!
*発色状況は閲覧の環境により、異なりますのでご注意ください。
ちなみに検証方法は、こんな感じ
今回、バイオレットはイエローアンダートーンの補色と想定。そのため染める毛束は、17レベルに設定した。そこへA~Eの5社のバイオレット系8レベル(3%OX)を塗布。その後、40分放置してシャンプー水洗。さらに褪色状況を見るために複数回シャンプー水洗を行う。今回は、22回(3週間経過に相当)と、45回(再来店時1.5か月後に相当)の2パターン。ちなみに「ティント」は白毛に染めたもの。
そうです、ここでのバイオレットは、下の17レベルくらいのイエローアンダートーンの補色を想定した8レベルの色味という位置づけだったんです。
ご存じのように補色には、アンダーの黄ば味などの邪魔な色を消して、求める色味を出しやすくする効果があります。つまり、ここでは、ブリーチオンカラーでイエローアンダートーンまでリフトした時のオンカラーの色味を出しやすくしてくれる状況を想定しているわけです。
5社の毛束を見てみると、まず、同じ8レベルでも全然濃さが違います。また一口に黄ば味を消すと言っても、いろんな染まり上がりがあるのも分かりますね。しかも、褪色状況も5社ではかなりのバラつきがありました。
兄さんいわく、
「今回のような発色や褪色の検証を行うと、『色味が抜けやすい剤は良くない』とか、『残留色素が気になる色はNG』などという声をよく聞きます。でも、これは早計な話です。
なぜなら、色味が抜けやすい剤なら次回カラーチェンジしたいお客様に向いていますし、残留色素も上手く活用すれば次回提案のカラーの手助けをしてくれることもあるんです。
大事なのは、そうしたことを踏まえて、自分の使っているカラー剤がどんな特性を持っているかを理解し、その上でお客様に提案しているかです」
なるほど、勉強になるなー。
ちなみに兄さんが、バイオレット8レベル5社分の発色&褪色状況から導き出した傾向は、こんな感じ。
17レベルのアンダートに対して
・赤紫のティントを持つA社は、ベージュ寄りに褪色していく
・紫のティントを持つB、D社は、ホワイト寄りに褪色していく
・青紫のティントを持つC、E社は、グレー寄りに褪色していく
さらに5社それぞれの特徴やサロンワークでの使いこなしについては、こんな感じでまとめてくれました。
A社=褪色後の残留が最も少ないので次回も明るめのカラー提案がしやすい
B社=白っぽく褪色するので次回補色をあまり考えずにカラー選定できる
C社=褪色しても紫味を感じるので色持ちを重視する方に向いている
D社=褪色後も紫味を残しつつスモーキーな色味に色落ちする。C社とE社の中間くらい
E社=早い段階で紫味は感じなくなるが、その後の褪色は感じにくい。褪色による色の変化を楽しみたい方に向いてる
ところで、バイオレットはイエローアンダートーンの補色なのだから、
「サロンワークでは、何らかの色味をミックスすることもあるのでは?」
などと、素朴な疑問が頭をよぎったので、それを兄さんにぶつけてみると、
兄さんは、ニヤリと笑い、
「それなら、イエローアンダートーンの補足のバイオレットに、希望色をモノトーンとした場合を想定して検証してみます?」と一言。
ここでは、発色の仕方が対照的だったA社とB社のバイオレット系8レベルに、それぞれモノトーン系10レベルを9:1で混ぜてみました。
その検証結果が、コチラ。
ザザーン!
モノトーンって、無彩色(=暖色でも寒色でもない色)って意味だけど、こう比較していると、A社が寒色寄りのモノトーンで、B社が暖色寄りのモノトーンに見える。やっぱ補色のバイオレットによって、ここまで変わってくるんですね。
ちなみに兄さんいわく、
「染まり立ての発色が違うだけではなく、補色の違いでモノトーンの色持ちも変わるのが分かります。A社、B社で使ったのは、同じモノトーンです。だから褪色の仕方は本来は同じはずなのに、補色の黄ば味を抑える度合いによって、色持ちに違いが出てくるわけです。
そう考えると、サロンワークではアンダートーンに合った補色の色味選定はもちろん、その補色がどの程度残留するかも考慮して、補色選定するのが重要になってくるということが見えてきます」
確かに! 残留ティントがどんな感じになるかを把握しておかないと、次回来店時の色味提案に影響しますもんね。
いやー、補色って奥が深いなー。お腹いっぱいです!
などと感想を述べて帰ろうとすると、
兄さんは、
「え、これからバイオレット系+ナチュラル系の検証もやるんですけど」
と、俄然、続行モード。
……あ、そういえば、バイオレットの後はブルーも検証するって言ってたな(汗)。
当然のように検証は、ここで終わるわけはなく、
まだまだ続いていくのでした。
さすがです。【毛束の人】のこだわり、恐るべし!
*兄(@anino_boyakilab)
静岡県出身。都内の大手サロンを経て、2015年に独立。独立を機に、様々なセミナーで習得した理論の検証と研究をスタートする。2020年春より、Instagram上で、自身の検証内容の投稿をスタート。サロンワークに即した検証内容と、確かな研究結果が多くの美容師やメーカー開発者から支持される。現在、Instagramのフォロワーは2万人。