ヒト幹細胞培養液という化粧品原料名を聞く機会が増えていませんか? そこで、急遽、ヒト幹細胞培養液の勉強会を開催。 そもそもどういう働きをするものなの? 髪に対する作用は? 基本的なことから学ぶ勉強会でしたが、そこで紹介された重要ポイントをご紹介いたします。
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幹細胞は、分裂して自分と同じ細胞を作る能力(自己複製能)と、別の種類の細胞に分化する能力を持ち、際限なく増殖できる細胞と定義されている。身体にトラブルがあった時に、対応に必要な細胞に自分が変わるか、もとからある細胞に指令を出して、その細胞にトラブル対応をさせる。ちなみに、幹細胞自体を化粧品に使用することはできない。
ヒトの身体(脂肪や骨髄、歯髄、さい帯等)から幹細胞を取り出して、培養液中で培養すると、幹細胞はたんぱく質を放出する。放出した後に、幹細胞を取りのぞくと、放出したたんぱく質が溶け込んだ培養液になる。これが、ヒト幹細胞培養液という原料になり、それが化粧品に配合されたりしている。
では、ヒト幹細胞培養液に含まれるたんぱく質とはどういうモノなのか? 一言で言うと、成長因子。成長因子とは、特定の細胞を増やしたり、活性化させたりするたんぱく質だ。例えば、皮膚のコラーゲンが不足していたとする。そうすると、幹細胞から放出された成長因子が線維芽細胞のレセプター(受容体)に結合し、コラーゲンがつくられていくという仕組みだ。つまり、従来の化粧品では、コラーゲンの不足を外からコラーゲンを塗布することで補おうとしていたが、ヒト幹細胞培養液化粧品は、成長因子を外から補うことで真皮内の線維芽細胞に働きかけ、内部からコラーゲンを作っていくという考え方だ。代表的な成長因子として、EGF(上皮細胞増殖因子)、FGF(線繊芽細胞増殖因子)などがある。
ヒト幹細胞培養液に含まれる成長因子が髪に対してどういう働きをする可能性があるのか、論文で発表されているものを中心にご紹介。aFGFやVEGF は、血管を新生する働きがあるため、発毛をサポートしていくことが考えられている。KGF は、髪の毛や皮膚が形成される際に必要なケラチン生成を補助する成長因子なので、発毛環境を整えることが期待されている。また、HGF やPDGF は毛髪の休止期を成長期へと促すものとして、IGF-1 は毛母細胞の増殖効果として期待されている。
17 型コラーゲンとTGF-βによる毛包幹細胞の維持
成長因子TGF-βは、ジヒドロテストステロンが生成された状況では、発毛を抑制する働きを行うことが知られているが、一方で、17 型コラーゲンと共同して幹細胞の維持に貢献することがわかってきた。つまり、髪の毛の大元となる毛包幹細胞や色素幹細胞を維持することが期待されている。
エクソソームによる抗酸化
ヒト幹細胞培養液には成長因子以外に「エクソソーム」という物質が含まれている。簡単に言うと、遠くの細胞にも情報を届けることが出来る物質だ。「エクソソーム」には、細胞に抗酸化酵素を作らせる働きがあるため、活性酸素による頭皮環境の弊害を除去することが期待されている。
培養液がビメンチンを誘導し髪の成長期を正常化
ヒト幹細胞培養液がビメンチンというタンパク質を誘導されることがわかってきた。成長因子だけでなく、このビメンチンが生成されることで毛髪の成長期が正常化することが期待されている。
アンチエイジング社の「RemyStem」の特性
ヒト幹細胞培養液といっても、いろいろな種類の化粧品原料が市場に出ているのが現状。ここでは、アンチエイジング社が発売している「RemyStem」の特長を解説する。タイプで言うと、脂肪由来のヒト幹細胞培養液。製造工程においては、幹細胞を傷つけずに脂肪組織を採取する吸引技術、採取した脂肪組織から幹細胞を分離する技術、幹細胞を分化させずに培養を続ける技術(幹細胞が他の細胞に分化していたら幹細胞培養液と言えない)などを採用している。最大の特長は、培養方法にある。ローリングボトルの中で培養させることで、常に幹細胞を刺激させ、情報伝達物質を分泌させている。この培養方法により、タンパク質もエクソソームも通常の約10 倍が分泌されている(同じ細胞数、同じ培養液、同じ培養期間での比較)。
原液とリポソーム加工したものがある
アンチエイジング社のヒト幹細胞培養液には、原料そのもののタイプと、原料にリポソーム加工を行ったタイプのものがある。原料タイプはエレクトロポレーションなどで導入を促していかないと、皮膚には浸透していかない。一方、リポソーム加工したものは、皮膚に馴染みやすく浸透しやすくなる。そういう違いがあるため、化粧品ではリポソーム加工したものが多く使われている。アンチエイジング社の原料を使用しているACTIVART(アクティバート)のスカルプローションは、原料とリポソームタイプの両方を配合している。肌からの浸透はリポソームタイプで、毛穴からの浸透は原液で、という考え方からだ。
「アクティバート」
アクティバートとは?
ブランドネーミングは優れたアクティブ成分(=Active)に最新の浸透技術(= Art)を融合させるという考え方に基づいている。アクティバートはたしかなエビデンスと安全性に基づいたヒト幹細胞培養液のパイオニアであるアンチエイジング社の原料を採用し、お客さまに安心してお使いいただける高品質なスカルプ商品を提供。また、ヒト幹細胞培養液をより確実に頭皮届けるためのメソッドを考案。サロン技術×ヒト細胞培養液で段階的に、再生プロセスへと導いていく。
スカルプメソッド概要
「クレンズパウダー ⇒スカルプシャンプー⇒バランシングウォーター ⇒ SCスカルプローション」の簡単な4ステップ。吸着性と吸水性に優れた100%天然クレイで頭皮のうるおいを奪うことなくしっかり汚れを取り除く。つづいて、湯洗い、スカルプシャンプーのあとには還元水で毛穴の皮脂の酸化を防止し、pH 調整することで健全な頭皮状態にしてSC スカルプローションを塗布していく。サロンケアとホームケアを併用することで、より効果を実感しやすいお悩み解決型メソッドとなっている。
ヒト幹細胞培養液 メニュー化の可能性
中から効果を出すスパとして興味がある
田中和寿さん
BEETLE
今、トータル美容と健康をテーマに進めているので、身体の中からキレイを維持できるというのは必要な部分だなと強く思いました。ヘッドスパもずっと取り組んできたのですが、今使っている商材だけでは何かが足りないと感じていたところなので、中から効果を出していくのはこれからのスパとして興味があるし、今までのスパのベースがあるからこそ、ヒト幹細胞培養液を使ったスパは導入しやすいですし、有効かなと思いました。
メニュー化の際、効果の可視化が重要
力丸正啓さん
BOUQUET HAIR DESIGNER`s
うちではオイルを使ったクレンジングスパを展開していますが、それに育毛発毛効果を加えたメニューを作ってもいいのかなと感じました。悩みを抱えている人がメインターゲットなので、ほとんどのお客様に提案できそうです。その際は、マイクロスコープなどを使った効果の可視化が重要だなということも感じました。幹細胞培養液配合の商品自体が増えてきているので、それぞれの特性を見極めてお客様に伝えていけたらと思います。
クリニック寄りの提案ができる
眞上博久さん
KouHaku
今までの育毛剤とはフェイズが違うという印象です。クリニック寄りになっているという感じです。そういう意味で期待はありますが、必ず結果が出るとは言えないので、提案の仕方が難しいですね。ただ、本当に薄毛で悩んでいる人への提案アイテムとして持ち球が増えるのはありがたいです。実際の施術は手数が少なくていいなと思いました。スパを見直さなきゃと思っていたところなので、メニュー化に向けて検討してみたいです。
オーガニックと最先端を組み合わせたい
新保真琴さん
Clutch Jam
幹細胞培養液配合の化粧品を実際に使ったことがありましたが、実際にどう働いているのかがわからなかったので長続きしませんでした。ただ今回、肌や髪に対して根本的な土台を作っていくということが分かったので良かったです。サロンでは、オーガニックやアーユルヴェーダをベースにしたスパ等に取り組んでいるのですが、そういうナチュラルなものと最先端の科学的なものを融合させていきたいと思いました。
30 代のファーストエイジングにも提案できる
逸見亜希さん
BOUQUET HAIR DESIGNER`s
セミナーの内容が面白かったです。今年、32歳になるんですが同世代でも、髪のハリコシやボリュームがなくなってきたという悩みを持つ方が増えてきているので、30代ぐらいの方にも提案できると思います。クレンジング後にスカルプローションを組み合わせるだけですから、ヘッドスパとしても導入しやすいです。メンズも含めて、長くオシャレを楽しみたいと考えているお客様に積極的に提案して行けるなと思いました。
アンチエイジング(株)マテリアル事業部部長
藤田英人氏
アンチエイジング株式会社
「ヒト幹細胞培養液」原料の国内化粧品業界におけるパイオニアとして活動するほか、次世代バイオアクティブ製品を国内にて積極的に展開している。
コスメシューティカル(株)ヴァイスプレジデント
松岡悟史氏
コスメシューティカル株式会社
「ヒト幹細胞培養液」を配合した化粧品を製造販売している。主な自社ブランドとして「ACTIVART」がある。
〈お問い合わせ〉
アンチエイジング株式会社
TEL.03-3478-0248
コスメシューティカル株式会社
TEL.03-3478-0368