全美連(𠮷井眞人理事長)は5月10日午後1時から、都内代々木の美容会館9階ホールで第396回理事会を開催、付議事項の令和5事業年度第80回通常総会及び第397回緊急理事会の招集並びに提出議案に関する件を含む全議案を承認可決した。
議事に先立って挨拶した井理事長は、コロナ禍やウクライナ問題など世界情勢の変化に言及して「世界が大きく変わり、大変な時代に突入したと感じている」とした上で「世界が変われば日本も変わり、当然我々の業界も変わる。美容業界を取り巻く環境はこれまでになく厳しく、従来のように少し手を加えるというリフォーム程度ではどうにもならない状況だ。令和5年度においてはリフォームではなくリノベーション、それも土台や柱までも大きく変革して価値を高めるアクティブ・リノベーションが求められてこよう」と述べ、新しいものを取り入れることの必要性を強調した。そして、こうした様々な変化について「連合会や各組合が発展していくためには非常に良いチャンスだ」と評価した。
𠮷井理事長は更に、美容業界が社会の一員としてこれから取り組むべき課題としてSDGs(持続可能な開発目標)や従業員の労働環境整備、リカレント教育(仕事と教育を繰り返す)やリスキリング(仕事と並行して学ぶ)といった従業員教育の問題等も挙げ「これらの課題を令和5年度の事業の中に取り入れていきたい」とコロナ明けの組合行政に意欲を示した。
この後、𠮷井理事長が野本義久副理事長を議長に指名して議事に移った。冒頭、石川県組合の前川幸子理事長が発言を求め、5月5日に同県能登地方で発生した地震について「被害は珠洲市周辺に集中しており、美容室の被害も未確定だが今のところ寄せられていない。多くの方からお見舞いを頂戴した」と報告を兼ねて謝辞を述べた。
議事の報告事項では事務局より①組合員数、➁美容業における新型コロナ感染症拡大予防対策、③BGMの著作物使用料、④令和5年度厚労省補助金事業、⑤同生活衛生関係営業事業費補助金等について、また金内光信副理事長からは⑥外国人美容師管理実施機関についてそれぞれ説明があった。
それによると、①の令和5年4月1日現在の組合員数は43,281名で前年同月比1,608名の減。ただし、組合加入促進対策として実施した「組合員プラスワンキャンペーン」では山形県、和歌山県、鳥取県、島根県、香川県、徳島県、福岡県、宮崎県、沖縄県の9県が1名以上増加しており、5月25日開催の第80回通常総会で表彰する。➁に関しては、5月8日以降新型コロナウィルスの感染症法上の扱いが5類感染症に位置付けられたことを受け、全美連としてはこれまでの業種別ガイドラインを美容事業者が自主的な感染対策に取り組むに当たっての指針として引き続き活用してもらう(全美連HPにも掲載)という。③の問題については全国生衛中央会を通じて「ジャスラック」および新規参入の「ネクストーン」と交渉中だが、中央会としては現在ジャスラックに支払っている年間6千円(500㎡未満のサロン)の使用料が増額することは認めない方針で対応していくという。
これに対し③に関して熊本県の片山和隆理事より「ジャスラック等に協力して各県でとりまとめる必要性があるのか」と全美連の考えを質す質疑が出され、𠮷井理事長は「連合会が指示等を出す問題ではないので各県ごとに利用状況などを踏まえて決めて欲しい」と答えた。
⑥について金内副理事長は「現在、TAYA、カキモトアームズ、ソシエワールド等で韓国、中国の美容師を中心に就労している。いずれも極めて高いレベルの人材が配置されており、就労者はもちろんだが受け入れ側のサロンも満足しているようだ。再三言っているが、この事業は決して美容師不足を補うことが目的ではなく、優れた日本の美容文化を世界に広めるための育成事業。この事業が今後も発展していくことを期待している」と報告した。
付議事項では、第1号議案の全美連斡旋モデルウィッグ販売価格の改定に関する件および第2号議案の2023年OMC世界理美容技術選手権大会研修旅行団参加役員への費用補助に関する件について事務局より説明があり、第3号議案の令和5事業年度第80回通常総会及び第397回緊急理事会の招集並びに提出議案に関する件では、令和4事業年度事業報告や同収支決算、令和5事業年度事業計画(案)等が各担当委員長より報告された。
令和4事業年度事業報告のうち組織強化・広報委員会では、井手口宥公委員長が「組合員プラスワンキャンペーン」の結果について「いつもは3、4県だが9県は初めて」と評価しながらも「組合員の減少問題は年々厳しくなっており対策は待った無しだ。各県は一人でも多くの組合員を増やして欲しい」と危機感を訴えた。事業・教育委員会の澤飯廣英委員長は「ハートフル美容師養成研修」の現状について「コロナ禍で開催が難しかったが今年度から展開したい。県ごとの単独開催が難しい場合はブロック単位で検討して欲しい」と積極的な開催を要請した。連携事業・デジタル化推進委員会の白川徹委員長は、日本理容美容教育センターとの産学連携就職情報交換事業について「3年が終了したが参加美容所数は過去最高だった。この事業は組合員店舗の労働環境整備に寄与するだけでなく組織強化にもつながる事業なので、今後も教育センターとは連絡を密にして事業の推進に当たりたい」、また「組織運営におけるデジタル化の推進」については「情報共有の迅速化・ペーパーレス化を進めるためにアイパッドを全理事に貸与するとともに、更なる活用促進を目的にタブレット型端末機の講習会も全国6ブロックで開催した」と報告した。
この他、コロナ禍で美容室に対する需要が感染拡大前の状態に戻っていない事を受けて、本年度は国の「生活衛生関係営業活性化支援事業」を活用し、サロンへの消費喚起を図りたいとする令和5事業年度事業計画(案)概要を含む全議案を提案通り承認可決した。
挨拶する𠮷井理事長
野本義久議長
謝辞を述べる前川幸子石川県組合理事長
外国人美容師管理実施機関の報告をする金内光信副理事長