お客様が「置き去りにされた」と感じる時
若手美容師のための接客術

これからお客様つけていきたい若い人が、気をつけなきゃいけないことって何でしょうね?

取材でそんな話をしたら、複数のサロンの美容師さんから同じことを言われました。

「バックを切ってる時に、会話を忘れて無言になっちゃう子がいる」

「モデルやお客様は、どうなっちゃうんだろう…と不安な顔をして鏡を見てる。あれは傍から見ていてヒヤヒヤする」

実はこれ、カットが上手いと評判のサロンほど起きやすい現象みたいです。

ABBEYのスタイリスト、瀧正也さんと久保梨沙さんとも、同じような話題になりました。

熱心にカットの練習をしたアシスタントやジュニアほど、いざ実際に髪を切る、しかもばっちりフォルムをキメたいバックのカットとなると、集中するあまりお客様との会話を忘れてしまうらしい。

一生懸命なあまりの無言、編集部としては切ないなーと思いますが、お客様にしてみたら「置き去りにされてる」感あるはずです。リピートにはつながりにくい…。

瀧さんと久保さんからはこんなアドバイスをいただきました。

「無理して会話しなくてもいいんですよ。ずーっと下向いてないで、時々顔を上げて、鏡の中で目を合わせるだけでもお客様は安心する」

「オススメなのは、顔まわりを先に作ってしまうことですね。顔まわりが決まっていれば、そんなに不安にならないんです」

なるほど、それならバックを切るとき無言になっても、「あー、一生懸命切ってくれてるんだな」という印象になるかもしれませんね。

「カットのどこに時間をかけるか問題」については、記憶に残っているお話があります。

同じくABBEYのカンパニーディレクター・小田嶋信人さんが若手スタッフに言っていること。

「30分のうち20分バックを切ってたらリピートしてくれないよ。時間をかけるなら一番気になる前髪。バックはささっとスピーディに!」というもの。

これ、バックのフォルムに並々ならぬこだわりがあるに違いない小田嶋さんが言うからこそ含蓄があります。

お客様が一番気にする正面、美容師のこだわりどころのバック。営業では両者の間でギアチェンジが必要なんだなーと考えさせられたのでした。

※写真はすべてTOMOTOMO BASIC SERIES VOL.5より