全美連(藤原國明理事長)は11月18日午後2時から、富山市内のボルファートとやまで第403回理事会を開催し、付議事項の第54回全日本美容技術選手権大会の開催地に関する件を含む全議案を承認可決した。
議事に先立って挨拶した藤原理事長ははじめに先の衆議院選挙について触れ「自民党が大幅に議席を失った。アメリカではトランプ氏が新大統領に選出されたこともあって、専門家の間では日本を含めて今後世界が大きく変わっていくことに懸念の声も出ている」と前置きした上で、「我々の美容業は平和産業であると同時にファッション産業でもあるので、消費者には常に安全・安心の快適で上質な美容サービスを提供することが使命と言える。そのために美容師法という法律がある。この社会的使命を達成するため生衛法(生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律)という法律に基づいて設立されたのが我々の団体だ。これからも連合会及び各単組の組織強化や組合への加入促進をはかり、志を同じくする人たちを一人でも多く集めるよう努めていきたい」と組織運営への決意を述べた。
藤原理事長はまた最近の業界の変化についても言及し「フリーランスと呼ばれる新しい働き方をする美容師や、無店舗で訪問美容を行っている美容師たちの組合加入問題が注目されている。現状では無店舗美容師は組合に入れないが、美賠責(美容所賠償責任補償制度)などへの魅力から『無店舗だが組合に入って訪問美容事業をしたい』という美容師も相当数あるなど状況が変わってきている。この問題についてはこれから生衛法に基づいた組合員の定義に関する見解をきちんと見極めたうえで整備検討していきたい。組合員の定義に関しては、複雑な問題もあるためこれまであまり議論がされてこなかったテーマだが、今後は避けては通れないのでしっかり検討して21世紀に相応しい内容を目指したい」と取り組みに前向きな姿勢を見せた。
野本義久副理事長の議長で議事に移り、報告事項では組織強化・デジタル化推進委員会(今野仁委員長)、教育・広報委員会(谷上司委員長)、共済委員会(山口雅生委員長)から報告があった。この中でデジタル化推進の進捗状況について報告した今野委員長は、7月に各単組を対象に行ったアンケートで組合に対する意識や取り組みにかなりのギャップがあったことを報告した上で「一つの単組も取り残されることの無いようにデジタル化を進めていきたい」と語った。
また、理美容師の実技試験や理美容学生の実習の見直し等を視野に入れた「厚生科学審議会生活衛生適正化分科会 理容師・美容師専門委員会」の第2回開催に関して事務局より報告があった。それによると、第1回専門委員会(2024年6月18日)で検討された理容師・美容師専門委員会の設置、理容師制度および美容師制度を巡る現状と動向等の結果を受けて、第2回の委員会(2024年9月12日)では1.検討に当たっての主な論点、2.美容師養成施設の教育状況等に関する令和5年度調査結果の報告、3.関係団体からの意見聴取、4.その他を議題に議論された(注:1回、2回の専門委員会の検討内容詳細は厚労省のHPに掲載)という。
この専門委員会に対する全美連(藤原國明理事長が委員として出席)の対応について事務局は「美容師の養成制度、資格制度はこれまでも時代のニーズに沿って必要な見直しを行いながら確立されたされたところであり、消費者に満足してもらえるサービスを衛生的に提供するために基本的な仕組みであると考える。こうした認識をもって全美連は、規制緩和という名のもとにこれらの制度が揺るがされるようなことがあってはならないとの姿勢で専門委員会に臨んでいる」と説明した。なお、第3回委員会は2024年12月25日に開催される予定で、今年度末までには一定の方向性が示されるもよう。
報告終了後の質疑では金内光信理事(東京都)から人手不足問題に関連して「美容師国家試験の不合格者をサロンで実習生として従事させる救済方法として、現行の管理美容師制度を活用できないか」、また松谷秀嗣理事(三重県)から「社会保険に未加入のサロンは求人で苦労している。東京や大阪など大都市には美容国民健康保険組合があるが、こうした組合を全美連でつくれないか」との意見が出た。健康保険組合について事務局は「新規の健康保険組合を美容で設立するのは現状では無理」と回答した。
付議事項の第54回全日本美容技術選手権大会(2026年度)の開催地に関する件については、今年の8月31日を締切に募集をかけたが応募が無かったため、ブロックの順番として九州・沖縄のブロック長に検討を依頼していることが事務局より報告され承認された。
挨拶する藤原理事長
野本議長
理事会のもよう
金内理事
松谷理事
取材:小牧 洋