全日本美容業生活衛生同業組合連合会(藤原國明理事長)は1月22日午前11時半から、都内千代田区のホテルニューオータニで第404回理事会を開催、付議事項や協議事項を含む全議案を承認可決した。冒頭、昨年11月17日に逝去した吉井眞人前理事長の冥福を祈って黙祷が捧げられた。藤原理事長は年頭の挨拶で昨年6ブロックで開催した組織強化会議に触れ「参加者には生衛法や美容師法の意義、歴史等について理解を深めてもらえたと思う。多くの事例発表を聞いて、それぞれの組合が組織強化および組合への加入促進に様々な工夫を行っていることを実感できた。本年もこの二つは連合会にとって一番大事な事業なので、理事者の協力を得ながら着実に進めていきたい」と決意を語った。
議事に先立って一般社団法人 全国生活衛生同業組合中央会(大森利夫理事長、以下、中央会)の伊東明彦専務理事が、現在国(厚生労働省)が制度改正の準備を進めていると言われる「被用者保険」(厚生年金や健康保険のこと)の適用拡大について説明し、中央会が生活衛生事業者への影響を緩和するために自民党生活衛生議員連盟(田村憲久会長)等に提出している要望事項に関する説明を行った。
この被用者保険適用拡大とは、これまで被用者保険の適用除外だった美容業・理容業等の個人事業主も制度改正によって、常時5人以上を雇用している事業所の場合、現行では任意包括適用(余裕のある事業主は加入を選択できる)だがこれが強制適用となり、5人未満の場合は現行の任意包括適用のままというもの。
伊東専務理事は説明の中で、こうした動きが業界にほとんど知られていない現状に強い危機感を示し「この改正案が国会で通ってしまうと小規模事業者が多い生衛業は大変なことになる。従業員のための改正もあまり性急に行うと事業主負担の増大による倒産も起こり得る。職場が無くなってしまったら制度改正の意味がない」と訴えた。理美容を含む16団体で構成する中央会では、要望書の中で「被用者保険適用拡大の必要性は理解する」としたうえで、生衛業は物価高騰やコロナ禍の後遺症(融資負債等)で苦しんでいるとして「事業主への配慮」を強く求めている。その上で、具体的に1被用者保険適用拡大による負担増に対応する生活衛生事業者側の体力回復に必要な支援施策の実施が優先、2短時間労働者の適用を拡大する、従業員50人以下を含む全法人(企業)を適用事業所とする「企業規模要件」の撤廃は反対、3「任意包括適用制度」の継続要望(1)個人事業所(常時雇用5人以上)の非適用業種を撤廃することは反対、(2)個人事業所(常時雇用5人未満)への適用拡大は反対、4保険料の負担割合を変更できる特例(事業主負担増)を創設することは反対、5「年収の壁」は縦割り行政を超えた調整(国民の納得、公平感の醸成)が必用などとする5項目を要望している。
理事から今後の見通しについて問われた伊東専務理事は「(改正案の)国会への提出時期は3月上旬と聞いている。会期末(6月末)までに成立すれば施行は2年後か3年後とみている。我々の痛みを少しでも和らげるためにも最大限の交渉努力が必要」と述べて中央会の取り組みに理解を求めた。
報告事項では、昨年12月25日に厚労省で開催された第3回厚生科学審議会生活衛生適正化分科会・理容師 美容師専門委員会に関する議事内容が事務局から報告された。それによると、今回は国際理容美容専門学校(東京都)と岩手理容美容専門学校(岩手県)へのヒアリングが行われ、平成29年度に実施されたカリキュラム改正に関する課題や現在の実務実習の在り方等に対して両校が意見を述べた。この専門委員会は本年度内に更に2回開かれたのち当面の方針が取りまとめられる予定。
このほか、昨年12月20日に日本理容美容教育センターと美容、理容の各連合会との間で行われた産学連携事業に関する打合せ内容も事務局から報告された。それによると、打ち合わせ会には全美連側からは野本義久副理事長、今野仁常務理事が出席し、今年度計画している事業について話し合った。今年度は小中学生に対する理容室、美容室での職業体験を計画しており、同事業の実施によって理容や美容への興味・関心を高めてもらい専門学校への入学促進、就職支援等にも資することを目的としているという。初年度となる今年はテストケースとして理事長(北海道)、副理事長(3名=群馬県、富山県、大阪府)の計4県で実施し、成果や課題等を精査した上で修正を加え、令和8年度から全国でも実施する計画。
新年懇親会も開催
理事会終了後の午後4時からは、同ホテル鳳凰の間に多数の国会議員をはじめ業界各団体の代表など多数を招いて新年懇親会を開催した。藤原國明理事長の年頭の挨拶に続いて来賓の福岡資麿厚生労働大臣、加藤勝信財務大臣、田村憲久元厚生労働大臣、斉藤鉄夫公明党代表、衛藤晟一元内閣府特命担当大臣らが祝辞を述べた。
福岡厚生労働大臣は「物価上昇等の影響で美容業など生衛業を取り巻く環境は依然として厳しい。厚労省としては生活衛生関係事業者が物価上昇等に機動的に対応できるよう、生衛の各連合会による価格転嫁の円滑化に向けた取り組みを支援しながら、経営課題の解決に向けた専門家による伴走型の相談支援を進めていきたい。更に日本政策金融公庫による低利融資や税制措置など業界の振興や収益力の向上等の支援に取り組んでいく。現在、物価上昇を上回る賃金の実現に向け政府一丸で取り組んでいるので、美容業界においても着実な賃上げに協力をお願いしたい」と挨拶し理解を求めた。また、現在生活衛生議員連盟の会長を務める田村氏は、被用者保険(厚生年金、健康保険)の適用拡大問題について「まだ議論をしている最中だが、今の適用除外という状態を何とか延ばせるよう頑張りたい」と語った。
タカラベルモント(株)の吉川秀隆会長兼社長による発声で祝宴に移った後も、日本政策金融公庫の中村裕一郎氏、理容師美容師試験研修センターの遠藤弘良氏、日本理容美容教育センターの谷本穎昭氏、NHDKの横田敏一氏、ICDジャパンの大林博之氏、全日本美容講師会の福島吉範氏ら業界関係団体の代表が祝辞を述べた。
藤原國明理事長
伊東明彦専務理事
福岡資麿厚生労働大臣
田村憲久生活衛生議員連盟会長
吉川秀隆タカラベルモント(株)会長兼社長
取材:小牧 洋