ミルボン(坂下秀憲社長)は、2月3日(月)、「NEXT VISION 2025」をオンライン開催した。
坂下社長は、2025年はサプライチェーンの構築、エネルギー問題、生成、AIの活用、物流の社会的課題、プライシングなど、様々な論点が展開されており、日本においては、特に人口減少、客数減少が大きな影響を及ぼすことを踏まえ、今後の経営戦略を今一度点検すべき状況となっていると指摘した。
■美容室経営の最重要課題は「働き手の確保」と「客数の確保」
リアルサービスを主軸とする、サロン経営における一番の課題は働き手の確保である。若手の人口が減っていくことから、採用育成から定着までどのような人材戦略を描くのかが課題。さらに政府は、2029年までに最低賃金の全国加重平均を1500円に引き上げる目標を出している。仮に1日8時間、240日間労働と考えた場合、月24万円以上が必要となり、これまでに経験したことのない人件費の上昇を迎える。そして、人口減少を基とする客数の確保は売り上げに最も大きな影響を及ぼすため、客数減少時代、経営コスト高騰時代にどのような成長戦略を描くのか、鍵となるのは顧客にとっての形づくりと適正なプライシング、つまり値付けが重要となる。
■市場政策のテーマは「高付加価値戦略」
1. 若手の持ち味を生かす「水平型教育」
2. 生涯美容、生涯顧客、生涯美容師を叶える「領域の拡張と専門性」
3. 業務メニューと知範の「付加価値創り」
これら3つの可能性を捉え、サロンの「高付加価値戦略」を進めていく。
戦略とはプライシング力を高めること。人口減少時代における働き手確保のための採用コスト、客数確保のための集客コスト、さらにインフレ時代のエネルギーコスト、賃料の上昇とともに人件費の高騰は、加速度的に上昇することが予想される。このインフレの波を受け入れ、乗りこなしていく経営戦略が必須となる。
高付加価値戦略の4つの観点
1 業務メニューの付加価値を創造し、適切なプライシングをする
2 業務メニューによる感動体験を知販市場に繋げていくインフラの構築
3 化粧品市場の開拓において、美容師ならではの提案で顧客の美容体験を豊かにする
4 主役である美容師の育成支援
以上4つの観点を持って、増収増益の高付加価値戦略として提案する。
■「付加価値の創造」と「プライシング力を高める」
サロンがプライシング力を発揮すべきサービスは、ヘアカラーやサロンケアなどの業務メニューだが、顧客のニーズが多様化し美容師が学ぶべきことが増える一方で、その反面、働き方改革や環境整備が必要となり、リアル教育が減少せざるを得ない状況である。それにより、ヘアカラー教育においては、情報のリソースがデジタル教育に偏り、知識力は向上するものの「似合わせ」ができない、薬剤の意図を理解できないまま施術に入るなど、知識と経験の積み重ねがされにくい。これはリアル教育の減少に起因しているものと考えられるが、労務面や教育する側の負担など複数の要因により、業終了後に教育するには余裕がないと言うのが実情。そうした中、サロンのリアル教育は営業時間内に行われることが増え始めている。
付加価値創造プロセス
プライシング力を高める業務メニューの点検
リアル教育のあり方の見直し
■高付加価値戦略の具体策
・顧客タイプ別推奨カラーメニュー
・ヴィラロドラカラーメニュー
・カミマユカラーメニュー
上記3つのメニュー作りと教育サポートを準備し、サロンカラーの価値向上からカラーメニュー、プライシング及びサービス単価向上を支援する。
顧客別推奨カラーメニュー
ターゲット顧客によって異なるカラーニーズに合わせた、高付加価値カラーメニュー バリエーションと、それを実現する教育・アプローチ法・レシピ情報・推奨商品をパッケージにして提案。ヘアカラーの高付加価値化、カラーメニューのプライシングの底上げを支援。
ヴィラロドラカラーメニュー
オーガニックブランドとして安心安全であること、季節や顧客のライフスタイルの変化に対応したプロモーション、PALETTE(パレット)によるファッションカラーも含めた高付加価値化によるカラーメニューのプライシングから、サービス単価の向上につながる提案を推進し、プジョリを含めた知販市場につなげる。
カミマユカラーメニュー
今年はアイカラーを加えてヘアカラーと目元の新バランスを叶える、美容師にしかできない付加価値提案とする。ヘアカラーを起点とした連動提案として、メーキャップ商品の美容室購入を習慣化していく。化粧品市場は美容室市場の倍以上あり、美容師にしかできない付加提案によって、化粧品市場を美容室市場に取り込むことで、成長戦略を強固なものにする。
■知販市場における成長戦略
サロンの知販市場を最大化するには、感動を連鎖させていくためのインフラ整備が必要で、それが「スマートサロン」と「milbon:iD」である。
スマートサロン
2024年末現在、全国50都市62サロンの展開が進んでおり、多くのサロンで知販の売り上げ向上が見られる。また、スマートサロン展開前からmilbon:iDの取り組みやソムリエ育成がされているサロンは、早い段階で成果が出始めていることから、スマートサロンでの取り組みには7つの成長ドライバーがあると考え、①年間計画 ②技術スペース ③体験スペース ④mlbon:iD ⑤顧客体験コンテンツ ⑥ソムリエ育成 ⑦オペレーションのアップデート、これら7つの項目について継続的に向上させていくことが、圧倒的な規範を叶える成長戦略の要件とした。
mlbon:iD
2024年末現在で会員数87万人、年間流通金額は40億円超。今年度は、①mlbon:iD 会員のエンゲージメント・LTV向上支援策 ②アクティブ会員づくり支援 ③mlbon:iD サロン支援、の取り組みを行う。昨年、ミルボン公式チャンネルにおけるライブショッピングでは、年間視聴者数9万人、流通金額1.8億円を超え、この金額はサロンの売り上げにそのまま貢献。サロン支援では、償却支援や顧客管理、売り上げ管理をスムーズに行うためのポス連携、情報誌の発行等、支援策を充実させていくことで、知販市場における成長戦略を支える。
■教育支援策
フィールドパーソンによる「入店教育」
業務メニューにおける課題発見、トレンドカラーのレシピ相談、ヘアケア技術のレベルアップ、各種商品に関する疑問解消などサロンの課題に合わせた様々な教育に対応。営業時間中の教育環境をより充実し、業務メニューの付加価値づくりに貢献し、メニューのプラン向上を支援。
キャリア支援
顧客の生涯美容を叶える生涯美容師として必要なスキルを学び、着実なキャリア形成を支援する仕組みとして、専門性教育を充実させ、ソムリエ制度も引き続き充実させる。また、入社後の即戦力化のサポートとなる、学生向け「オージュアソムリエ カリキュラム」の検証を進め、サロンの採用強化にもつなげていく。
毎年参加人数及びレベルが上がってきてるDAにおいては、教育サロンとして組織の一体感を高めながら、個々のクリエイティビティを発揮し、個々のデザイナーとしての成長の実現を支援する。