古城 隆さん(DADA CuBiC)に聞きたい10のこと(後編)
今、最もホットなデザイナーが語るクリエイションについて

注目のヘアデザイナーにクリエイションについてお聞きしているこの企画。『DADA CuBiC』の古城 隆さんの後編、Q6~Q10までをご紹介します。

Q6いつ頃から撮影を始め、どのくらいから納得のいく作品を撮れるようになりましたか?

今でも100パーセント満足のいく作品はなかなかつくれないですが…、デビュー後の22歳の頃から撮影を始めて、ある一定のクオリティが出せるようになったのは20代後半だと思います。

若い頃は、ヘアのデザイン力も足りなかったし、色々なことを判断する力が足りなかった。例えば、撮影の現場で、ベストなアングルはどこかとか、ヘアのバランスはどうかなど。そういうジャッジって、教えてもらえるものじゃなくて、自分で見つけていくこと。今でも、的確なジャッジができるように、なるべく客観的にヘアや写真を見ることを心掛けています。

「ヘアデザインは、バランスを探すゲームのようなところがある」と古城さん。「いいかどうかは、自分がそのデザインを見た時にドキッとするかどうかですね」。

Q7 撮影での失敗談がありましたら、教えてください。

撮影を始めたばかりの頃、モデルが高校生だったのですが、夢中になって撮影していたら、終電を逃してしまったんです。そうこうしているうちに、モデルのお父さんから怒りの電話がかかってきて…。モデルから電話を代わって謝りつつ、横浜の家までタクシーで、カラリストの川口(展弘氏)と一緒に送っていくことになりました。その当時サロンがあった原宿から横浜までって、意外と遠くて2万円くらいかかり…デビュー直後でお金を持っていなかったから、この出費はきつかったですね。帰りは2人で、横浜のファミレスで時間をつぶして、早朝に電車で帰りました。寒い時期じゃなかったから、まだよかったのですが、あの時の心もとない気持ちは、こうして話をしている今でも思い出しますね。

Q8 撮影とサロンワークで、表現するヘアデザインは違いますか?

スイッチが違うだけで、気持ちは一緒。デザインのスイッチは様々に切り替えますが、大切なのはどれだけ感情をこめることができるかです。一日サロンワークだった日も、終わった後に、「今日一日、いいデザインがつくれたか?」って反省するんですよ。

撮影の時にも、基本的にヘアの切り直しをしません。自分のつくりたいデザインにフィットする人、表現したい世界観をわかってくれる人にお願いするようにしています。

古城氏が一番気に入っているという作品。SHINBIYO2015年12月号の表紙。「前髪を切りこんだ感じが潔くて、つくり手のエネルギーが出せたかなと思っています」。

Q9 ヘアデザイナーとして、一番影響を受けた人は?

植村(植村隆博氏/DADA CuBiC創設者)ですね。彼の人間性にはとても影響を受けました。自分は、植村からいつも「もっと強くなれ、強くなれ」と言われていました。彼は強い人だった。そして、本当の意味で、やさしい人でもあったと思います。

Q10 これからクリエイションに取り組む美容師さんへメッセージをお願いいたします。

まず自分の核を築いていくこと。それにつきると思います。自分は何が好きか、自分の武器を探すこと。いろいろな経験をしていって、これが得意と思うものを見つけることが大切だと思います。

自分の核は、ベーシックな技術とジオメトリックなフォルムだということに、20代後半に気づきました。今でも、これが自分の根底になっています。ジオメトリックな美しさを知ると、その魅力から抜けられないんですよ。細かいところの精度も、バランス感覚も研ぎ澄まされる。ジオメトリックなデザインを極めることで、デザインを見る目も養われたと思います。

プロフィール

古城 隆/DADA CuBiC

こじょう・たかし 1980年生まれ、大分県出身。大村美容専門学校(現・大村美容ファッション専門学校)卒業後、大分市内1店舖を経て、2000年『DADA(現・DADA CuBiC)』に入社。09年からアートディレクターを務める。卓越したテクニックに裏打ちされた、シャープで繊細なデザインを得意とする。弊社より、植村隆博氏との共著『ベースカットバイブルvol.1グラデーションボブ』を刊行。