西村晃一さん(Nicole.)に聞きたい10のこと (前編)
今、最もホットなヘアデザイナーが語る「クリエイション」について

注目のヘアデザイナーにクリエイションについてお聞きします。
今回は、昨年『JHA』にて準グランプリを受賞し、『SHINBIYO』7月号の連載企画「ORIGINAL DESIGN」でも遊び心溢れるデザインを見せてくれた『Nicole.』の西村晃一さんが登場。ヘアデザインやクリエイションについて、ある時は、大好きな野球に例えながら、熱く楽しく語っていただきました。今回は、前半のQ1~Q5をご紹介します。

『SHINBIYO』7月号「ORIGINAL DESIGN」では、レイヤースタイルをテーマに4点のスタイルをつくっていただきました。

Q1 デザインは煮詰めていくタイプですか? ひらめき派ですか?

ひらめき派ですね。

何か気になるものとか、気になるヘアスタイルって、タイミング、つくりたくなるきっかけがあるんです。映画見るとか、ライブ見るとか。あとは、街を歩いていてかっこいい人やものを見かけるとか。それで、あれかっこいい! って、そこからアイデアがひらめく感じです。完全にひらめきタイプです。

Q2 雑誌社などから撮影を依頼された場合はどうでしょう?

そのときも同じ、ひらめきタイプですね。依頼される場合はテーマがあることが多いので、そのキーワードからイメージしていきます。

デザインというよりも、そこで表現する女の子のムードが先行しますね。例えば「グラボブ」っていうテーマだったら、ブリティッシュな雰囲気とか、子供っぽくてかわいいイメージとか。そうしたら、こんな服を着ていてとか、パンツよりはスカートが似合うなとか、ブワーッと女の子のイメージが広がっていくんです。そこから、そんな女の子に似合うデザインは? というふうにヘアスタイルに結びつけていく感じですね。

Q3 そんなふうにイメージを広げていくために、心がけていることはありますか?

僕の場合、特に意識して何かやっているということはないですが…。先程、街でかっこいい人やものを見かけて、そこからアイデアがひらめくと話しましたけど、逆に、何も感じない人や響かないものを見たときのほうが、もっとこうしたらいいのに、こう変えたらもっと良くなるのにって、想像を働かせてるかもしれませんね。これは、もう習性ですね(笑)。興味がなくても、スルーはしない。例えば、ある女の子を見て、その人のなりたいイメージが何となく伝わってくるけどイマイチ…って時がありますよね。そうしたら、この人は毎朝20分早起きして、頑張ってあれとこれをしなきゃだめだなとか、どこそこの洋服屋さんに通ったほうがいいなーとかね。そういうことは、いつも考えてます。

7月号の撮影では、『Nicole.』のサロンをお借りして撮影を行いました。営業後も遅くまで、スタッフの皆さんがお手伝いしてくれました。

メイク担当の河内亜妃さんにイメージを伝えた上で、「亜妃ちゃんなら、どうする?」とアイデアを求める西村さん。指示するのではなく、考えさせるこのやり方が、スタッフが伸びる秘訣かもしれません。メイクの様子を見ながら「ええやん!」と笑顔で声を掛けていました。

Q4 モデル選びのポイントはありますか?

あると言ったらありますけど、時代と共に変わってきますね。目がくりっとしてて、鼻が高くてっていうハーフみたいな子とかがいいときもあれば、今はどっちかというと、きりっとした切れ長の目の子がいいとか。そのとき興味を持っている世界観やテーマに似合いそうな子を探していることが多いかな。

もちろん、すごく気に入っているモデルさんと何度も撮影することもありますけど、一方で飽きてくることもあるんです。そういうときに、新しいモデルさんと出会って話をしてみると、急に興味が湧いてきたりということもある。スマホの画像とかでパッと見てかわいいなと思う子もいるけど、それだけじゃだめなんです。実際に会って話してみて、その子のバックボーンとかが少し見えてきて興味が湧くとか、ノリがいいなとか、撮影してみたいなとか、撮影したら面白いだろうなって思える人と一緒にやりたいと思っています。

逆に言うと、外見だけでお願いすることはほとんどないですね。いっぱい話をして仲良くなって、性格や内面も含めて魅力的だと感じた人とじゃないと楽しくないですからね。

『SHINBIYO』2013年8月号表紙
ショートをテーマにした作品。イメージソースは、80年代に一世を風靡したチェッカーズ。イメージに合わせて、中性的な雰囲気が似合うカッコいいモデルさんをチョイス。

『SHINBIYO』2014年12月号表紙
顔周りのデザインをテーマにした作品。赤毛のボブが似合うハーフのモデル。端正で甘い顔立ちと、強調させたもみあげのCカールがフィットしています。

Q5 撮影でこだわっていること、心がけていることはありますか?

好きだから楽しいから、やっているという感じなんで、特にこだわりとかはないんですけど、あえて言うなら、いつもホームランを狙って取り組んでます。新しいものを生み出す瞬間を、「ホームラン」って言ってるんです。でも、ホームランって打ちたいからといってすぐに打てるものでもないから、撮影の現場でフルスイングできるように、8~9割のイメージを持って臨んでいます。そこまでのイメージや準備、野球で言ったら、日々のトレーニングとか試合に向けてのシミュレーションは怠りませんよ。

撮影をやっている人で、ホームランを狙っていない人はいないでしょう、きっと。僕も、毎回、全打席フルスイングしてホームランを狙ってますよ。もちろん、ボテボテのときもありますけどね(笑)。そういうのがあるからこそ、またやりたいって思えるんですよね。

西村晃一 / にしむら・こういち 1972年生まれ、大阪府出身。高津理容美容専門学校卒業。1999年に大阪・天下茶屋に『Red Pepper』をオープンし、『Jurrian-may』、『Nicole.』、『SUMI』と4店舗を展開。2017年には『Red Pepper』を『ReDio』と改めてリニューアルオープンしている。シンプルな中に“尖った”部分を残すスタイルづくりは、幅広い世代から人気が高い。2018年、JHAにおいて準グランプリを受賞。

※後編(Q6~Q10)は、7月26日(金)アップ予定です。