7月19日アップの前編に続き、SHINBIYO7月号「ORIGINAL SESIGN」にご登場いただいた『Nicole.』西村晃一さんの後編、Q6~Q10をお届します。
Q6 好きな世界観は? 理想とする女性像はありますか?
いっぱいありますよ(笑)。一回好きになると嫌いにはならないので、歳のぶんだけどんどん増えていきますよね。でも、嫌いなものが多いより、好きなものが多いほうがいいですよ。今なら、尖がってる感じが好きです。今の世の中ではあんまり見かけない、希少種みたいな人やものに惹かれますね。ちょっと前まで尖っていたものも、量産されてしまうと何とも思えなくなるというか、刺激がなくなっちゃったり、見飽きちゃうのかもしれませんね。20年くらい前のものとかを見返すと、逆に新鮮に感じたりすることも多いですよね。
Q7 どんなものから、インスピレーションを受けていますか?
映画ですね。音楽も、映像も入ってるし、世界観やストーリーも出来上がっている。俳優さんの声とかセリフの内容とか、刺激を受ける要素が多いから、映画はいいですよね。そのために見てるというより、映画を見るのが好きなので、そこから影響を受けることが多いという感じです。
自分が刺激を受けたり、面白いと思ったものは、「これ、おもろいわー」って、スタッフにも話したりすすめるようにしています。サロンの中で同じ価値を共有するって大事だと思うんですよ。特に、うちのサロンはスタッフでチームを組んでコンテストや撮影に取り組むことが多いですから、同じものを見て同じように面白がれないとね。もちろん個性も大切なんだけど、一方でお店のカラーというのもキープしていかないといけないと思ってます。
Q8 最近、影響を受けた作品はありますか?
分かりやすいところで言えば、ちょっと前だと、「ビー・バップ・ハイスクール」を見て、刺激を受けました(笑)。去年、ドラマ化して話題になった「今日から俺は」は、自分の青春時代を思い出して懐かしくて、そこから、「ビーバップ…」へと広がっていって、数十年ぶりにいろいろ見直したんですよ。さっきの質問の答えではないけど、「不良」って、言ってみれば、今の時代にはほぼ絶滅した希少種ですよね、リーゼントとか聖子ちゃんカットとか。当時、不良たちが着てた学ランも、短ランの丈だったり、裏地の色だったり、結構オシャレなんですよ。そういうこだわりを熱く語りながら、スタッフにすすめました(笑)。
今は、昔の作品とかアイドルとかの映像も、You Tubeとかで簡単に見れるから、「見てみー」ってすすめてます。やっぱり、共感を求めますよね。SHINBIYO7月号「ORIGINAL DESIGN」では、レイヤーがテーマだったので不良スタイルをイメージソースにしていますが、「ビーバップ…」に共感しないスタッフだと、その撮影に連れてっても盛り上がらないなーって思っちゃいますよね。どうせやるなら、現場で盛り上がって、一緒に面白がってくれる子と撮影したいって思いますもん。
Q9 ヘアデザイナーとして、最も影響を受けた人は誰ですか?
ヘアデザイナーなら、『Double』山下浩二さん、ヘアメイクとして活躍されている川原文洋さんですね。ヘアに限らず、デザイナーという枠でなら、山本耀司さん。
耀司さんにいたっては、僕が初めて、ものごとを「デザイン」するという意味を知るきっかけになった人です。「デザイナーって何だ?」と子供ながらに思って、洋服って、湧いて生まれるんじゃなくて、デザイナーが形とか色とかを考えて、設計して、職人さんとかに指示してつくっているのだと知ったんです。
山下さんや川原さんは、彼らのデザインがかわいい、好きというところからスタートしましたが、実際にお会いして話してみると、すごく楽しそうに仕事をしてるし、話す内容とか共感できることも多くて、余計に興味が湧き影響を受けるようになりましたよね。
すでに自分の店を出してたけど、「山下浩二の店に入りたいな」って、店をたたんで東京に行くか、大阪でがんばるのか、真剣に考えましたからね(笑)。結局は、大阪が好きだし、東京に行って真似するのも嫌だし、大阪のお客さんをきれいにしながら、大阪で自分のやり方を考えなきゃって思ってやってきました。
Q10 これから撮影に取り組もうとしている皆さんへ、メッセージをお願いします。
洋服で言ったら、いきなり山本耀司さんのような服をつくろうと思うのは間違い。始めてすぐにコンテストで入賞したりっていうラッキーがあるかもしれないけど、ラッキーは続かない。下手でもいいから、好きなことをゼロから始めて、1、2、3と少しずつ段階を踏んで行ったほうが面白くなるし、途中で投げ出したりしないだろうなって思います。10年20年って続けてきたものが、少しずつ認められて、「らしさ」っていうのが生まれてくるものですから。
以前、子供の野球チームの監督が、「負ける覚悟と勇気を持たないと何もできないんですよね」と話していたことがあって、本当にその通りだなと感じました。作品撮りに置き換えても同じで、自分で下手だとわかっていて、下手だと思われたり言われたりすることを恐れずにやり続けるって、すごく勇気が必要なんですよ。でもね、下手でも好きなことをやり続けたほうが、絶対に楽しいし上手くなるはずだから、下手こく勇気を持って、夢中でやってみてください。
西村晃一 / にしむら・こういち 1972年生まれ、大阪府出身。高津理容美容専門学校卒業。1999年に大阪・天下茶屋に『Red Pepper』をオープンし、『Jurrian-may』、『Nicole.』、『SUMI』と4店舗を展開。2017年には『Red Pepper』を『ReDio』と改めてリニューアルオープンしている。シンプルな中に“尖った”部分を残すスタイルづくりは、幅広い世代から人気が高い。2018年、JHAにおいて準グランプリを受賞。