今年もJHAの授賞式が終わりました。1990年に始まり、今年でなんと30回目。30周年を記念して、今年から「RISING STAR OF THE YEAR」にジャーナル賞が設けられたり、スペシャルゲストとして第一回授賞式でロンドン審査員を務めたアンソニー・マスコロ氏を招いてショーステージを行うなど、例年よりもさらに豪華なセレモニーが行われました。
ここ数年、美容業界全体のコンテストの傾向として、「クリエイティブ」は「サロンスタイル」を完全に超越した“創作”ではなく、何かしらサロンスタイルにリンクしたものであること、サロンスタイルに還元できるリアリティのあるもの、という価値観が重視されるようになってきました。JHAも例外ではなく、ノミネートされた作品を見ると、地毛を活かしたカットスタイルが非常に増えてきているようです。実際、受賞した作品も、ショートヘア率(しかもかなりのベリーショート!)が高かったように見受けられます。
もちろん、ウイッグはウイッグで、地毛では難しいフォルムや質感の表現が可能になりますし、新しいヘアデザインを生み出すツールのひとつではあります。ただ、最近のクリエイション(フォトコンを含むコンテスト全般)の傾向を見るに、審査される際に特に重要視されているのは「モデルへの似合わせ」であり、その点においてやはり“地毛”のリアリティというものは強く望まれているように感じます。そのヘアスタイルによってモデルの個性や魅力が引き出されていること、そのヘアスタイルが“その人のため”の唯一無二のデザインになっていることが、写真作品になった際にも強く人を惹きつけるのだと思います。
古城さんの受賞作品 (c)SNIP STYLE
今回グランプリを受賞した『DADA CuBiC』の古城 隆さんも、準グランプリを受賞した『SCREEN』の神谷 翼さんも、作品はすべて潔く地毛を切り込んだスタイルでした。そしてやはり、ヘアスタイルの造形ありきではなく、“その人(モデル)”に圧倒的に似合わせた上で、かつ新しさを感じさせる力強さが感じられました。
古城さんは表彰のコメントで、言葉に詰まりながらこんなことを言っていました。
「6年前、うちのサロンには大きな穴が空きました(※古城さんの師匠であり、『DADA CuBiC』創設者である植村隆博氏が急逝した)。その穴を埋めるために、6年間、スタッフと必死に努力してきたつもりです。今日はそれが報われたように思います」
サロンワーク、アカデミーやセミナーの講師、一般誌や業界誌の撮影、スタッフの育成…等々、彼が背負っていた仕事とそのプレッシャーは尋常ではなかったことが容易に想像できます。そして、師匠から受け継いだ技術や価値観の継承と、1デザイナーとしての自分らしさの表現との狭間で葛藤も少なからずあったはず。そんな中で、彼が一貫して追求し続けたのが“カット”でした。
古城さんの受賞は、ホンモノの技術、そして美容師に一番大切なことをシンプルに証明してくれたような気がします。
受賞者のみなさん、改めておめでとうございます。
そして、今年もたくさんの感動をありがとうございました!
JHA30周年記念サイト
授賞式レポート