SAKURAさん(Cocoon)に聞きたい10のこと(前編)
今、最もホットなヘアデザイナーが語る「クリエイション」について

SAKURAさん(Cocoon)に聞きたい10のこと (前編)

今、最もホットなヘアデザイナーが語る「クリエイション」について

注目のヘアデザイナーに、クリエイションについてお聞きしている連載企画。今回は月刊『SHINBIYO』2月号の「バチバチ・クリエイション」にて、透明感のあるヘアデザインを見せてくださった、『Cocoon』のSAKURAさんが登場です! 2回にわたってお届けするうちの1回目となる今回は、前編Q1~Q5をご紹介します。2月号の撮影の裏話として、ロングのモデルさんのヘアカットにも密着! 誌面と合わせて是非ご覧ください。

Q1 デザインは煮詰めていくタイプですか? ひらめき派ですか?    

お仕事のお話をいただく際は、企画のテーマなどがあると思うんですが、それに対するアイデアやこういうのをつくりたい!というのはわりとすぐ思いつくほうなので、ひらめき派ではあると思います。ただ、それを実際につくるには?という段階になると、自分の中でさまざまな分析を始めたりもするので、結果的には結構煮詰めていくタイプだと思います。思い描く仕上がりに早くたどり着きたい性質なので、どのようにしたらいいかを考えたり、効率重視なところもありますね。そのための準備も結構するほうだと思います。

Q2 デザインはどのように詰めていくのですか?

作品をつくるときにまず浮かぶのは、「明るいもの」とか、「キラッとした感じ」とか、「影っぽい」といった抽象的なイメージ。自分のその時の気持ち(精神面)が反映されているように思いますが、頭の中のイメージとしてはかなりカラフル。白黒とかではなくて色が溢れている感じです。その上でこういう世界観がいいなとか、ストーリー性とかをいろいろ妄想します。ただ、ヘアデザインとしては、現実的に「ありえないもの」はつくりません。作品を撮り始めた頃は、「なんか見たことのないものをつくってみたい!」と勇んでいたこともあるのですが、「でも、そんなことはできないんだな…」と思うようにもなって。それは師匠のVAN(Cocoonオーナー)の教えである「相手ありき」の考え方を強く意識するようになったからだと思います。相手の素材を見極めて、相手を感じながら、ヘアデザインを考える。作品づくりもサロンワークと同じですが、これが全てだと思っています。

(2月号バチバチクリエイションの裏側・その1)

この日は、モデルの顔見せ&ヘアチェック。透明感のあるモデルの雰囲気を感じながら、具体的な素材を確認。今回のモデルは胸下までの超ロングを切っても良いという。彼女との信頼関係を築くため、言葉を交わし、丁寧に気持ちを探っていくSAKURAさん。伸ばしていたわけではないというが、いきなり短く切ってしまうのではなく、モデルの気持ちに寄り添いながら顔周りを中心に少しずつ切っていく。長かった顔周りを切り込むことで新しい表情が見えてきた。顔周りを切るだけでも大きな変化となるので、この日の仕込みはここまで。次回は撮影当日に、もう少しデザイン性を入れていくことにした。

Q3 モデル選びのポイントはありますか?

撮影においては与えられるテーマや条件などもあるから、どんな髪型にしてもいいとか、ヘアデザインにおける自由度が高いモデルは嬉しいです。その上で、まだ何にも染まっていない感じの子や、自分の魅力にまだ気づいていないような原石みたいな子に出会えると燃えますね。いろいろ引き出してあげたいという思いもありますし、その子がまだ気づいていない魅力を伝えてあげることも私たちの仕事だと思うんです。具体的なヘアデザインを決めるときは、絶対に素材を見てからっていうのは、自分の中で決めています。デザイン自体は、モデルさんが決まると早いですね。モデルさんがカッコいい系なのか、カワイイ系なのかを分析しつつ、この子だったら逆の雰囲気を入れてみようとか、企画のテーマに合った、具体的な肉付けをしていきます。

(2月号バチバチクリエイションの裏側・その2)

撮影当日。ミドルをさらにレイヤーで切り込んで厚みを減らし、撮影のテーマである「ハイレイヤー」を新鮮なシルエットで表現。重さを残す部分を意識しながら、レザーでカットしていく。モデルとの間に信頼関係を築いているからこそ、ここまでの切り込みが可能に。「作品」をつくる上でも、現実的に考えてありえない表現はしない。「形に対してどう動かすか、だからこう切る」という紐づけの部分を大切にしてつくりこんでいく。

Q4 作品をつくるときに意識していることはありますか?

「相反するものをプラスする」という、師匠のVANの教えですね。自分の感覚に持っていないものを取り入れることで振り幅が出て、元々のいいところがさらに武器になる、というんです。私自身の作品としては、愛にあふれているような、明るい感じが好きなのですが、最近ではダークさなど、真逆な部分を取り入れる挑戦もするようになりました。正直、自分の中にないテイストを取り入れるのは、まとめるのも難しいし、正解を見失ったりもします。でも、その時にはわからなくても、後々サロンワーク中や別の作品をつくるときなどに、今までにないバランスで切れるようになったり、悩みを持つ人にいつもとは違うアプローチができるようになったりと、感覚の広がりを感じたりすることもあるので、この教えは貴重だなと思っています。

(2月号バチバチクリエイションの裏側・その3)

この日は、ロングのモデルに加え、スクエアっぽいショートスタイルのモデルと2名の撮影。ハイレイヤーで切り込んだトップを動かして、動きと厚みの絶妙なバランスを調整していく。夕暮れの部屋の中にいるようなイメージを再現するため、ロフト階からの照明により差し込む光をつくる。スタッフ総出で、SAKURAさんのイメージする「少女たちが心に秘めるキラキラした世界観」を形づくっていった。

Q5 ヘアデザインをつくる上でインスピレーションを受けているものは?

「洋服が好き」ということが、インスピレーションの一つになっていると思います。素材の組み合わせを楽しんだり、柄と柄の重なりを遊んでみたり…。その発想は、作品を想像しているときの気持ちと変わらないんです。そんなワクワクする気持ちや、誰にもわからないかもしれないこだわりの部分の蓄積が、作品やヘアデザインを考える上でも大いに役立っていると思います。

(2月号バチバチクリエイション作品)

SAKURA/さくら 1984年生まれ、石川県出身。日本美容専門学校卒業後、都内1店舗を経て、『Cocoon』のオープニングに参加。現在、ディレクターを務める。創作への熱い思いを持ち、常に進化し続ける、美容業界でも注目の女性美容師。

※後編(Q6~Q10)は、2月28日(金)アップ予定です。