パーマやカラー、トリートメント、処理剤etc.……、
いろんなケミカルプロダクツのパフォーマンスを
夜な夜な検証している研究熱心な美容師さんを毎回、お一人、ご紹介する
「YONAYONA CHEMICAL」
今回のゲストは、こちらの方!
『AZUMA 2nd』の東 照章さんです!
どことなく、ルパンの次元に似てる(笑)。
東さんのサロンがあるのは、和歌山県。今回は、東京・恵比寿にある『Lens』さんにて、アイロンのセミナーをするとの情報を聞きつけ、はせ参じました。
東さんと、『Lens』のオーナー伊藤正俊さんとは、かれこれ20年来の付き合いとのこと。お父様のお店を継ぐかたちでサロンオーナーとなった東さん。前職は美容とは全く違う仕事だったため、当時は自分が何のスキルもないことに焦りを感じていたのだとか。

『Lens』の伊藤オーナー
そんな折、知り合いを介して、伊藤オーナーを紹介されたのだそう。伊藤さんは、『PEEK-A-BOO』出身で、ロジカルかつ正確なカットに定評のある方。迷わず、弟子入りを志願した東さんは、それからずっとカットの師弟関係にあるそう。
そもそも東さんは、「伊藤さんに教わったカットのラインを崩したくない!」という思いからストレート施術のアイロンワークについて考えるようになったのだそうです。
実は東さん、今、発売の『SHINBIYO』2023年3月号の第2特集「酸性パーマ・酸性ストレートの2大トラブルに迫る 後編「酸化不足」を回避せよ!」の撮影にもサポーターとして手伝ってくれた方だったのです。
その撮影時、チラっと披露してくれたアイロンワークが非常に秀逸で、一度、その技をじっくりと拝見したみたいなと思ってたところに、今回のセミナーの話をいただきました!
ちなみにこの日のセミナーテーマは、「動く矯正」。
動く矯正って、何? と思っていると、すかさず東さんは、こう解説してくれました。
「ストレート施術をしてもシャキンとならず、かつナチュラルな直毛のような仕上がりで、また地毛のように動く髪を追求した矯正の方法です。ちなみにその時、一番のポイントとなるのは、アイロンワークなんですよ」
ちなみに東さんの動く矯正のアイロンワークで施術した仕上がりは、コチラ
いずれも動く矯正で施術後、ドライし軽くスケルトンブラシを通しただけの仕上がりだそうです。
さらに東さんは続けます。
「毛先がどちらかに流れる、右側の毛先が前に跳ねる、毛羽立ちができる、前髪が収まらない、毛先がチリついたり跳ねたりする。このような仕上がりの原因のほとんどはアイロンワークですよ」
そう話すと、おもむろに右の3つの毛束を見せて、「何か違いが分かりますか?」と質問されました。
私レベルでは、正直、どれも似たり寄ったりな感じにしか見えないのですが、東さんいわく、「見る人が見ると、全然違うのが分かるし、どんなアイロンの入れ方をしたかも分かる」とのこと。マジっすか!
ちなみに3つの毛束の
右側が、①動く矯正のアイロンワークをした髪で、
真ん中は、②毛先だけが動くが、根元は動かない髪
左側は、③このまま動かず、曲がらない髪
なのだそう。いずれも、アイロンの入れ方だけで、そうした特徴が形づけられてしまうというから驚きです!
さらに東さんは、よくあるアイロンの失敗パターン(上の②、③になってしまうアイロンワーク)を実演してくれました。
こちらが、②毛先だけが動くが、根元は動かない髪になりがちなアイロンワーク
そして、こちらが③全体が動かず、曲がらない髪になりがちなアイロンワーク
どっちもよく見るアイロンワークのようにも見えますが……。
というか、じゃあ、動く矯正のアイロンワークは、どんな感じになるの?
「まあまあ、焦らないで」とばかりに、東さんは、動く矯正のアイロンワークの所作を分析すると、ポイントは以下のようになるのだとか。
かなり細部にまでわたっているんですね!
ここで東さんは、動く矯正のノウハウの発信は「特にネットなどでは慎重にしているんです」とポツリ。
「例えば、動く矯正のアイロンのセクショニングは、基本、トップポイントから放射状に1.5センチ幅で取っていくんです。でも、これ、実際に取ってみると分かるんですが、必ずしもまっすぐな線にはならないんですよね。なのに、それをパッと写真を見ただけで判断して、それっぽく取ると、だいたいみんなまっすぐに取っちゃう。そういう情報のズレをなくしたいんです」
だからセミナーで直接教えることにこだわっているんですね。
「あと、ネットとかで動画で見せてしまうと、自分もできると勘違いした人が、上辺だけ似て、誤ったアイロンワークをしてしまい、結果、事故ったりするんです。それが怖いので、基本、セミナーにいらしてくれた方に直接指導するようにしているんです」
確かに一理ある。でも、これじゃあ、「YONAYONA CHEMICAL」を楽しみにしてくれている読者の人たちに顔向けできない…。そう思っていると、東さんは、「では、今回だけ特別に、動く矯正のアイロンワーク上手くいったストランドの特徴を教えてあげましょう」と一言。
上の動画のように、アイロン処理した毛束の毛先を押し込むようにすると、ハート形になるのが成功なのだとか。
「これがクセが伸びても自然に動く髪の特徴ですよ」と言いながら、「動く矯正のアイロンワークのポイントは、下側のアイロンプレートで熱を入れることです」。そう言って、技術のさわりを見せてくれました。
まず根元を頭皮に対して、毛束を直角に持ち上げ、アイロンを当てる。
アイロンの持ち方から独特! 写真だと分かりにくいのですが、下側のプレートを軽く上に持ち上げるように毛束に当てながら引いている!
そこから髪の落ちる位置に向かって、ステムをコントロールしながらアイロンを操作していく。
「持ち上げているわけじゃないんですよ」
当日、技術のサポートでいらしていた『Hair salon Sunrise』の赤松真至さんが、助け船を出してくれました。
「アイロンの下側のプレートの軌道をテールコームを使ってお見せしましょう」
ありがたや! ありがたや!
赤松さんによれば、「下側のプレートを毛束に密着させる動作が、そう見えるだけで、基本、アイロンの軌道は変わっていないんです」とのこと。
ここでは、パネルの関係性を分かりやすくするために、あえて厚めのスライスで解説しています。まずスライスを取った時、その厚みでスライスの上側、真ん中、下側ができます。テールコームを当てているところがちょうど真ん中です。
テールコームがアイロンの下側のプレートの役割です。パネルの下側を中間の位置まで持ち上げているのが分かります。ちなみに、この時、パネルの上側の位置は変わっていません。つまり、手首を返して持ち上げていると私が見間違ったのは、この動きだったんです。
この動きでアイロンを操作することで、プレートの中で毛束が密着し、しっかりと熱を伝えることができるのだそうです。
うーーん、奥が深い!
そして、何かイマイチ分かったような、分からないような……
やっぱり不完全燃焼感は拭えません(涙)。
いつか、この卓越された技術を『SHINBIYO』誌面でお伝えしたいです❗❗
あずま・てるあき/1970年生まれ。和歌山県出身。銀行員としての3年間のキャリアを経て、2000年、父親が経営していた理容室を継ぐかたちで美容業界へ。理容、美容両方の国家資格を持ち、幅広い顧客に対応。現在、和歌山市内に1店舗を経営する。物理化学などにも裏づけられたアイロンワークの論理的な説明に定評がある。https://www.facebook.com/teruaki.azuma